畑や広い土地持ちならば、野焼きなど自家焼却をしても違法ではない、と半ば諦めている人も多いのではないでしょうか。農家や地主ならば、いつでも何度でも何を燃やしても構わない、という思い込みから被害が多くなり、次第に取り締まりが厳しくなってきました。
無計画な宅地開発や、担い手のいない農地を分譲住宅地にしてしまったなど様々な要因があることでしょう。
昔からの風物詩として残したいという声もありますが、風物詩であっても他人が迷惑を被らないように時と場所を考えたり、あえて観光地化するなど対策(伝統行事として住居地と隔てる等々)をしています。また、どんと焼きなどの地域行事であっても、事前に届出を出す必要があり、規模によっては地元消防団や時には消防車も待機していますし、行事であれば周辺住民が事前に把握することができます。
この問題は、これさえすれば解決するという簡単なものではなく、地域によって介入してくれる自治体や公的機関も異なってきます。
また、「野焼きをすることで自然に還り、次期作物の肥やしになるし、害虫の駆除にもなる」という間違った知識のまま罷り通っている現状が事態をより複雑にしています。
そして、〝農地〟を所有しているから農家であるという明確な線引きはありません。(本人は農家ではないが、農地として相続したほうが都合がよかった等々。)
さらに、畑や田んぼであれば、誰かが余所から何かを持ちこんで焼却してよい、という思い込みまであります。(貸し農園や造園などは、農業にも林業にも当てはまりません。)
なにより大前提として、迷惑を被る人が一人でもいるならば、やり方を変えなくてはなりませんし、健康被害があるのでしたら尚のこと農家の権利を振りかざすようなことはあってはなりません。
消防に申請をして焚火などをしたとしても、その届出は全面的に「許可が下りた」という意味にはなりません。(届出制であって、許可制ではない。※後述)
未だに、このような主張を押し通そうとする方がわずかにいらっしゃいます。家庭ごみの焼却であっても、様々な理由をその場しのぎで並べるばかりで罰金・逮捕されるまで違法と認識できない方もいます。
そのような方々の言い分というのは、「重たいから…量が多くて…ゴミ集積場に運べない」等々という主張に最後は行きつきます。この理由は、もはや農業や林業を理由とするものではいので、まず最初に挙げておかなければなりません。
ご自身の年齢や、足腰などの体調不良を理由に家庭ごみの自家焼却を行おうとする主張は、『社会福祉』の問題として取り扱われる内容です。自治体など行政の側が『社会福祉』の問題として対応しなければなりません。
むしろ、足腰などの不調を理由にしてしまう場合、火の元の管理すらできない状態で自家焼却行為を容認することとなります。危険な行為であるという認識で、消防や警察、行政が対応しなければなりません。
そして、昔よく自家焼却していたという方の中には、もともと自宅敷地内に家庭用簡易焼却炉をお持ちの方もおられますが、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令で800℃以上で焼却などの条件が課されるようになりました。その他様々な構造基準も厳しく設定されており、家庭用簡易式の焼却炉でこの基準を満たすことは不可能です。
もちろん、ドラム缶や穴を掘って焼却という行為も、この基準を満たすことは当然できません。
※一般的な野焼きの焼却温度は200~300℃程度にしかなりません。
参照:廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令≪第六章-雑則-第十四条-五≫
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=346CO0000000300_20180401_430CO0000000055&openerCode=1
(焼却禁止の例外となる廃棄物の焼却)
五、たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの
〝軽微なもの〟という解釈に際して当事者同士のすり合わせが非常に難しくトラブルとなる要因となりますが、軽微なものであれば迷惑に感じる近隣住人は誰一人としていないはずです。また、以前は〝軽微〟に済ませてはいたものの、繰り返しの日常で施行側に慣れが生じ、ただ我慢を強いられてきた住人が耐え続けてきた末の結果となります。今まで問題なかった…のではなく、今までは近隣の我慢で成り立っていただけ、ということを深く反省しなければなりません。
※行政や公的機関に相談した時点で、軽微なものでは済まされない深刻な状態です。
※気軽に根拠なく通報できるものではありません。
たき火など軽微な焼却として認められ、周囲の迷惑とならないようにするには、予め日時や時間など取り決めておくことや、枝木が乾燥していない状態では決して焼却しないなど、野焼き〝施行者の側〟が方法を改める必要があります。(むしろ、昔はこのような声の掛け合いルールがありました。その声掛けすらできない稀薄な関係性も、一方的な被害者を多く生み出しているいる要因の1つです。)近ごろでは、隠れて野焼きをするために、夕方など薄暗くなる時間帯に火を付けたり、煙が高く上らないように敢えて生木の湿ったまま或いは小雨の降る中に強行する動きも多く見受けられるようになりましたが、より被害は広範となり野焼き施行者自身の首を絞めることになります。
生木のまま焼却しようとすると、火の粉や灰も多く舞い、ときに低い爆発音まで響くこともあります。水分が多いと蒸発させるために熱量が奪われ、黒煙が上がりやすくなります。火力が上がりにくいので上昇気流も起こりにくいですし、煙が低い位置で充満してしまい辺り周辺の広範囲に長時間にわたり被害が続きます。
火力が弱いため焼却にも時間がかかり、被害も広く、通報されるリスクも高くなるという流れです。
※低温での焼却では、ダイオキシン類などの有害物質の発生リスクが増大します。(そのため、800℃以上で焼却しなければならないという法律となりました。)
野焼きにお困りの方は、黒煙を確認したら証拠のために写真や動画を撮るなどしましょう。黒煙が確認されれば、違法に有害なものを焼却している可能性が高いと見なされ、詳しい調査も必要になるかの判断材料になります。そして、より厳しい指導や追求につながる可能性もあります。
枝木や落ち葉などの軽微な焼却に限られているため、新聞や広告などを着火に使用してしないかまで細かくチェックされることもあります。ビニールや発砲スチロールを燃やさなければ良いという認識では甘く、衣類も禁止の対象です。今時は衣類も化学繊維や綿混などが主流となり、有害物質を飛散させる原因にもつながります。
そもそも経ち返って考えれば、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令は、有害物質を含む廃棄物の処理方法についてルールを設けた法律であって、その法律ができた経緯や改正が重ねられてきた意義は、環境と健康を守るためです。
その煙を迷惑に思っている被害者1人でもいる時点で違法の疑いがあり、環境に良い「野焼き」など存在しません。廃棄物の焼却による大気汚染問題と人災(健康問題)として取り扱われるのが本来の法の趣旨です。
上記、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令≪第六章-雑則-第十四条≫にあたる廃棄物の焼却には、一般には「届出」が必要です。※例外規定の一~五については上記あるいはこちらから確認のこと。
この届出の目的について、〝誤った解釈〟をされている個人の方々が多くいらっしゃるように感じます。上記にも挙げたように、この届出は 「焼却の許可をもらうために提出するもの」ではありません。
本来の目的は、火災と見間違うような紛らわしい煙などを発生させてしまう恐れのある際に、消防が正確に把握するというものです。
消防法令及び火災予防条例;「火煙発生届出」
火災と紛らわしい煙又は火炎が発生するおそれのある場合は事前に所轄消防署等に届け出なければなりません。
各自治体毎に申請書や届出先など詳細が決められています。そして、都心部のみの制度ではありません。
火災予防条例は消防法第9条に基づき定める
火災予防条例は各自治体ごと
この届出を〝許可〟と勘違いしていらっしゃる方もいらっしゃいますが、あくまでも、野焼きは許可制ではなく『届出制』です。そして、届出たとしても、他人に迷惑をかけていいという意味ではありませんので、通報があれば警察や消防、時によっては保健所や役所の職員などが現場に向かいます。
ここからは、少し自称農家の言い分を交えて解説していこうと思います。素人相手には〝土壌改良が目的〟と言っておけば、何も言い返せないだろうという意図があります。
草木を燃やして灰にしたとしても、それだけで改良されることはまず不可能です。酸性に傾いた土壌を補正するために石灰などを撒く作業をしますが、燃えカスの灰だけでは全く足りません。薪ストーブの灰を畑に埋めることもあるでしょうけれども、石灰などが不要になるわけではありません。
それよりも、むしろ微生物、酵素も焼却してしまうため、それは改良とは言えません。また「土壌改良」と称して、毎週のように野焼きを繰り返す行為には信憑性はありません。
最近では、化学肥料の使用を減らすための栽培方法が、作物の味もよくなると見直されてきています。
化学肥料には原油が使われ、原料だけでなく製造にも多くの環境負荷がかかります。化学肥料を豊富に使えば、収穫までに短期間でこぎつけることができますが、その弊害として窒素過多に陥るため病害虫のトラブルもおおくなり、結果として土壌や作物に、除菌や農薬の使用も多くなります。
化学肥料に頼らずとも、有機農法など最近では環境に配慮した作物も広がりを見せています。
野焼きをしなければ農業は営めない、という思い込みから「野焼き禁止するなら野菜は食うな!!」という発言も稀にあるようですが、それは完全なる思考停止。
上記に少し述べたように、化学肥料の使用量を減らそう、という手法に「緑肥」「すみ込み」など様々な方法があります。化学肥料の原料は石油や石炭のため、高騰する肥料代の節約にも環境にも配慮することができます。
そして、エコファーマー認証や特別栽培農作物などといった認定制度も各地で広まってきています。作物残差や雑草でさえも、植物が持つミネラル、ビタミン、微生物などを活用して自然由来の有機源を有効活用することができますしますし、地球温暖化や生物多様性を重視した農業活動を行っている農業者は交付金をもらえるという制度もあります。
化学肥料に頼り、窒素過多状態で栽培した作物は、マグネシウムやカルシウムといったミネラル分の吸収も阻害してしまい、味が落ちてしまいます。微生物が活発に働かない土壌にいくら化学肥を加えても、微生物が作り出した栄養のバランスが乱れると、作物もバランスを崩してしまうため、病害虫が発生しやすくもなります。
連作障害のリスクや病気の発率も上がるので、化学薬品を必要とする土壌や作物となってしまいますし、窒素過多状態の作物はカビなども生えやすくご家庭などでの食品ロスにもつながります。
その辺を意識した栽培方法に懸命に取り組んでいる農業者の作物を選ぶことも間接的に環境問題に貢献することにもなりますし、味も栄養も良いため、栽培方法にもこだわった野菜を取り扱うレストランなども増えています。
野焼きをする理由にもう1つ、〝害虫駆除〟を目的と主張する人もいます。
しかし、月に何度も害虫駆除が必要になるでしょうか…
病害虫が発生するトラブルが絶えないのは、土づくりの手抜きの積み重ね。そして、それを取り繕うかのように病害虫を焼却しようとしてしまうと一緒に「益虫」までも死滅させてしまうので、そう何度も繰り返すはずもなく、むしろ悪循環。もはや支離滅裂なことをしている、という状況です。
自らの農業の手抜きのために、環境汚染を推し進める手法を採ってるにも関わらず、これを「やむを得ない焼却」と主張を押し通すのは、相手を見下しているからでしょう。
『土壌改良』『害虫駆除』などと主張しておけば何も言い返せない無知な相手だと高を括っているのか、それとも本人達は、そう信じ込んでいるのでしょうか。
野焼きを禁止とする都道府県や市町村は増えてきており、焼却をしなくてはならない籾殻などは回収する仕組みも築かれてきています。
そのような動きとともに、平成30年3月27日に環境省より「PM2.5と野焼き行為との関連について」通知もでました。野焼きを減らすための有効な取り組み例についても調査結果がまとめられています。
https://www.env.go.jp/air/osen/pm/ca/300327noyaki.html
しかしながら、役所に勤めている方々は昔からその地域に馴染みの顔も多く、人間関係など含め事を荒立てる可能性まであります。また、難しい問題に頭を突っ込んでも評価もされないし給料も変わりません。そして、野焼きに生活上・健康上も困ってる住民に対して「そのような土地に住んでいる方が悪い」と、現状から目を背ける発言をされることさえあります。
議員は昔からの支持基盤を失うことにつながりかねませんし、住民のみならず、企業や組合などの顔色を伺い、自身の支持に悪影響がないかという意識が先立ってしまいがちです。
面倒なことに関わりたくない役所、そして組織票を失いたくない地方議員、その無責任な対応が住民同士の対立を煽り、農業者と転入住民という対立構造を産み出すような流れに仕向けられる自治体もまだあります。
転入世帯を増やしたい…どうにか住民の流出を防ぎたい…そう切望する地方自治体が多いにも関わらず、人口減少を食い止められない理由はその組織の崩壊した部分に問題があるのではないでしょうか。(これは当然、野焼き以外にも言えることです。)
例えば、子育て世代のUターンやIターンによる転入を増やそうと、福利厚生の一環として「小児医療費助成」を年齢を18歳年度末さらに22歳まで延長しアピールする自治体もあります。一見、転入希望者の気を引きそうな内容ではありますが、病気の引き金にもなる大気汚染問題を野放しにしている自治体であれば、表面上取り繕っているだけに過ぎないでしょう。(表面的ばら撒き施策)
子育て世代の転入増のために斡旋・誘致などを促しておいて、転入後は「郷に従え」と、その土地の慣習を押し付けられて先住住民との対立が無視され続けるのは納得できるものではありません。自治体が新興住宅地の開発を進めたのであれば、その責任を全うすべき問題ですし、農地の後継者不足で賃貸を建てたり、分譲住宅地として売りに出た時点で、周辺自治体でカバーしなければ対立が起こります。
もちろん、矛盾の生じないように制度を確立している自治体もあります。解決できない自治体の側に問題があるのではないでしょうか。
これからの時代、もう医療費助成など表面上のアピールだけでは、新規転入希望は望めないどころか、地方自治の程度の低さも判断材料にされます。一時的な転勤などの仮住まいなどはともかく、家を購入し長く落ち着いた生活を考えている子育て世帯はシビアです。
地元特産の作物などを活用したりするなど、地方活性のために日々頭を悩ませている方々も多いことと思います。
もう、お気づきの通り、価格の安さだけでは生き残れません。むしろ、価格だけの安さ競争に足を踏み入れるのは自らの首を絞めることとなります。価格競争の土俵から抜け出したい農業者も多くいらっしゃるはずです。
「安心・安全である」というのは、この日本にとって当然のことである以上、付加価値を産み出さなくてはなりません。
近ごろでは、生産者の人権・経済的な自立や持続性・環境問題や遺伝子組み換え作物などなど、日本でもやっと社会問題として取り上げられてきている風潮があります。フェアトレード認証がよく知られていますが、レインフォレスト・アライアンス認証、UTZ認証、漁業ではMSC認証(海のエコラベル)など…目にするようになってきました。
日本の農作物についても、上記に挙げたエコファーマー認証など自治体ごとの取り組みも盛んになるなど身近に感じるようになってきました。
〝遠い国の関わりのないこと〟というイメージから、「いつか自分の生活にしっぺ返しが…」「将来の子や孫の世代のために…」という意識に変わりつつあるからです。
今まで興味関心もなかった〝野焼き〟問題から、単なる不快感という問題だけでなく、安心して洗濯物すら外に干せない日常の問題であり、大気汚染による健康被害、環境問題についてなど発展的に考えて頂くきっかけになれば幸いです。
大気汚染が健康問題、異常気象などにつながることにあまりイメージがつながらない方もいらっしゃるかと思うので簡単にご紹介しようと付け加えます。
微小粒子状物質(PM2.5)は最近よく話題になることも多くなり、健康に悪いイメージとして市民権を得たキーワードだと思います。ただし、中国などの大陸から風に乗って日本にやってくるものという思い込みは根強くあり、日常生活の身近なところで発生しています。
〝2.5〟という数字は粒子状物質の直径を表すもので、PM2.5は直径2.5㎛以下の物質のことを指しています。
では、なぜ〝直径〟なのか、注目される理由は「気管支の奥深く、肺胞にまで達するサイズ」にあります。
これ程までに小さい微粒子を吸い込むと、肺の奥まで達し、気道に物理的な刺激を加えたり抗原を引き付けたりする結果、アレルギー反応を起こすと考えられています。
〔独立行政法人環境再生保全機構:https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/47/report/report01.html〕
揮発性有機化合物(VOC)は文字通り揮発性を有し、大気中で気体状となる有機化合物の総称で、トルエン、キシレン、酢酸エチルなど多種多様な物質が含まれます。〔環境省より引用〕
このVOCも紫外線を受けると光化学反応を起こし、オゾン(O3)などの光化学オキシダントを発生させます。光化学オキシダントが大気中にたまり白くもやがかかったような状態を「光化学スモッグ」と呼んでいるます。
〔東京都公式ウェブサイト;光化学スモッグについて:http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2014/12/60oc9103.htm〕
また、光化学反応の際、大気中に微小粒子状物質(PM2.5やPM10などのPM)を発生させることも分かってきています。
工場や自動車の排気ガスなどについては既に規制や管理が進んでいますが、農業における産業廃棄物の処理だけは排出の制限など規制から免れるのは道理が得られません。
今は、空気清浄機などの機能の1つとして大気汚染メーター(PM2.5やVOC検知器)まで搭載されている機種まであります。環境省や各自治体より、このような大気汚染問題と健康被害が関連付けられている以上、身勝手な野焼きを正当化する訳にはまいりません。
2017年10月、岩手県遠野市で、野焼きの煙を避けようと運転した車が対向車と正面衝突し、同乗していた2歳の娘が死亡するという事故が発生しました。視界が妨げられるような煙で目の前を遮られてのでしょう…そのまま直進運転を躊躇するほどの煙が充満していたのだろうと想像できます。
このケースの場合、野焼きをしていた男性が農業を営む方だったために、「産業廃棄物処理法違反」とすることができなかったとされています。農家でさえなければ、廃棄物処理法違反25条1項15号により〝5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金〟に処せられる可能性がありました。さらに今回は犠牲者まででている事態なので、火災により人がケガをしたり亡くなったりした場合として、業務上過失致死傷罪に問われることもありました。
しかし、このケースは農業従事者という理由だけで、産業廃棄物処理法違反に問うことが難しいほか、農業従事者が行う野焼き行為は「火災」とすることができません。
大切な家族を失った方々の気持ちを思うといたたまれません…。
今回のケースでは、異例とも言える「道路交通法違反」で書類送検されることになりましたが、それほど重大な結果を招いたにも関わらず何の責任も問われない状況を避けるべく、出来うる限りの最適な法律を当て込んだと考えられます。結局、道路交通法違反の疑いで略式起訴され、罰金が科されたのみ。犠牲になったお子さんや、その家族は全く報われません。
このような悲惨な事故を起こしたにも関わらず、「野焼き特権」を野放しにしていいのでしょうか。
二度とこのような事故を繰り返させないためにも、少なくとも野焼き行為の際には事前周知を義務化したり、交通規制をする必要があるのではないでしょうか。
また、野焼きを〝田舎の問題〟として一蹴されるようなことは、あってはなりません。関東の主要な高速道路であっても、危険を感じることがあります。例えば関越自動車道…
関越自動車道を下り、埼玉に入って少しすると周辺農地の野焼きの煙が充満していることは珍しくありません。
特に危険に感じたのは、日の光が低緯度で差し込む季節や時間帯、それだけでも運転には神経をすり減らす悪条件のなかの野焼きの煙です。先方のドライバー達も危険を察知したのか低速運転で連なっており、そこへ油断した車が高速で近づき、あわや追突事故という状況でした。
夜間の野焼きも非常に危険です。ヘッドライトやブレーキランプで判別できるだろうを高を括っていると命取りとなります。夜間の濃霧のような状態の中での運転ですから、ヘッドライトに反射した中央分離帯に沿って進むしかなく、数メートル先の走行車線が確認できない状況というのは「野焼き注意」として速度規制やその他交通規制をするべきなのではないかと感じます。
せっかくならば、健康のためにも未来の子どもたちが暮らす環境を守るためにも、持続的な社会のため〝買って、生産者を応援〟することもできます。
地元のエコファーマー認証を調べたり、最寄のスーパーに取扱い要望を出してみたり…信頼できる八百屋さんを探してみたりすることで、少しずつでも環境配慮型農業の支援につながります。
また、野焼きの規制に前向きな産地を選ぶことも、生産者の応援にもなります。
『環境汚染や、呼吸器系への健康被害を与えるおそれがありますので、野焼きはやめましょう』と、稲わら・籾がらを使った田んぼづくり、家畜の飼料にも活用しようという動きがあります。
ポスター【左】からは、〝環境にも人にもやさしい「新潟米」づくり〟を目指す産地としてのプライドが感じられます。全ての稲作農家の方が、野焼き禁止に従っているという訳ではないでしょう。しかし、地方自治で様々な方を巻き込んで、未来を見据えた米作りをしようを努力している姿勢は、全国的に前例も少ないことと評価すべきと思います。
今時は、家畜の飼料まで畜産農家が自ら栽培することも少なくなり、輸入に頼る割合も増えてきました。そんな状況の中、遺伝子組み換え作物を飼料にして育った畜産物を敬遠する動きが日本でも強まってきています。
このような新潟県の農家連携として定着すれば、新潟を誇る作物や畜産物などのブランディングにも期待できると将来性を感じます。
〔新潟県ホームページ;稲わら等を活用しましょう!:http://www.pref.niigata.lg.jp/nosanengei/1343685653296.html〕
新潟県の各市町村でも
南魚沼市:http://www.city.minamiuonuma.niigata.jp/kurashitetuduki/gomi/kankyoubika/1475025600590.html
胎内市:http://www.city.tainai.niigata.jp/kurashi/sekatsu/kankyo/noyaki.html
柏崎市:https://www.city.kashiwazaki.lg.jp/nogyo_p/sangyo/nogyo/noka/inawara.html
新潟市:http://www.city.niigata.lg.jp/shisei/mayor/tegami_top/tegami/tegami_28top/28_5seikatu/H28-5-5.html
などなど…罰金を徴収される例もあり、形式だけの条例ではなく機能しているようです。
そして、新潟のみならず、青森県や秋田県も「野外焼却防止に係る先進的な取組事例」として挙げられています。
〔野焼き実施状況に関するアンケート調査結果を参照のこと:https://www.env.go.jp/air/osen/pm/ca/300327noyaki.html〕
こんな中、新たに野焼き促進条例を検討。これは、今時の世の流れに逆行する内容ではないでしょうか。
兵庫県三田市:三田市里山と共生するまちづくり条例の制定について〔議案第94号〕
http://www.city.sanda.lg.jp/gikai/shingi/yotei/documents/94gianh3012.pdf
三田市は「自然と共生のまち」をうたって1980年代から自然をPRした開発が進み、ニュータウンが登場しました。それ以降、「自然に囲まれた生活を送りたい」という人が三田に移住し、かつての田園風景から郊外の都市へと様変わりしていきました。ここでも〝農業者vs非耕作住民〟という対立構造に持ち込まれ、役所はその責務から少しでも距離をとろうとしています。
そのような無秩序な開発を推し進めておいて、野焼き被害を黙認する姿勢は市民に対する裏切り行為といっても過言ではありません。三田市のいう〝自然に囲まれた生活〟とは、農業を理由とした野焼きを文化として受け入れろ…という意味なのでしょうか。
〝被害を受け入れろ〟という姿勢のままでは住民からの不平不満は募るばかり、逆に農家からは、勝手に農地近くでニュータウンなど開発した市の責任であって農家には何ら咎めだてされるようなことはないという言い分。
その対立も相まり、人口流出も既に始まっている中、双方の側の住民から信用を失うことだけは避けたいと考え抜いた結果がこちらの議案に…。「里山との共生」に失敗したと気付かずに、いまだ綺麗事のような文言で埋め尽くされています。
都市地域と農村地域が「共生」「尊重」しあう「熟成」のまちづくり、「調和」と「相互理解」などと表現されてはいますが、これら今時代に「伝統文化」という言葉に置き換えられるものでは決してなく、さらに「持続可能」な社会の形成の理念と矛盾しています。このように言葉巧みに住民を誘導しようとしても、いまや環境省も法整備を厳格にしようとしている流れの中、そう簡単に住民を侮れるとでも思っているのでしょうか。
※三田市は、ほんの一例に過ぎないでしょう。このような自治体も今後出てくる可能性もあります。
愚策の行く末を見守りましょう。