「お子様づれOK」「離乳食メニューあり」のお店や、マタニティー専門のヨガスタジオ、アロマやマッサージ、珈琲・紅茶メニューなどなど、お子様連れに優しいサービスも一般的になりつつあります。これからも、女性やお子様の居心地のよい空間というニーズが求められていくと思いますし、ファミリー層に満足してもらえるサービスを考えることが企業の成功にもつながる時代になったのだと思います。
消費者が求めるニーズと企業の利益がうまくマッチした理想のカタチではないでしょうか。
しかし一方で、ここ最近『べビー専用商品』や『マタニティー御用達』などと、ターゲット戦略が激化しすぎていると感じます。商品にあふれた豊かな時代だからこそ選ぶ側も迷ってしまうのだと思いますが、行き過ぎたターゲッティングの細分化で不必要な商品ジャンルまで沸いて出てきている始末です。
今回は、とある雑誌の企画で、ベビー・マタニティー特化型の市場が様変わりしたな…と感じることがありましたので綴られて頂こうと思います。本題に入るまでの前置きを含めると、長くなるかもしれませんが、昨今の企業広告の変化についても触れる必要もあると感じましたので、ご容赦ください。
先日、某出版社が毎年のように年に1回企画されている「赤ちゃんグッズ」ランキングを見て、昨今のベビー・マタニティービジネスに違和感じました。雑誌などの出版物の売れ行きは低迷期にあるとされていますが、何かしらに特化した専門雑誌についても同じような現状にあります。
もちろん、ベビー・マタニティー雑誌などの定期刊行物であっても、一時期の流行で妊活期~妊娠器官~出産後の発育段階など細分化され過ぎた煽りもあるなか、やはり情報伝達媒体が多様化してきた昨今は厳しい状況のようです。
そこで、最近目にするようになったのが、企業が持ち込んだ企画です。昔から、特定の商品を紹介する場合はこのようなタイアップ広告は多くありました。しかし、ここ数年はその様相が変わってきていると感じませんか?
出版社⇔メーカー企業とのパワーバランスです。
たとえ大手出版社であっても、売れ行きの低迷期とともに広告費などの収入も思うように入らなくなってきました。
少しオーバーに表現するとしたらば、以前は「出版社の側が、企業の商品を特集してあげる側」であり、「出版社が吟味して、より良い商品を選定していた」ともいえます。特に人気の雑誌ではその傾向が顕著。
読者層が既に固定化されている人気雑誌では、その読者層にマッチする商品を取り上げてもらうことが何よりの商品広告でしたし、既に付いてる読者層がいるのでターゲッティングの選定もしやすいので企業側にもメリットが大きいですよね。
しかし、今は出版社の立場は弱くなりつつあります。
出版数は減り、企業が広告費を出す価値が下がってきたとも言える状況です。情報伝達媒体としての存在感は薄れつつあるなか、いまやネット広告に置き換わりつつあるのです。
さて、そうなってくるとパワーバランスは逆転。これまで以上に広告収入に頼らざるを得ない出版社は困ってしまいます。そこを逆手にとった企業が、タイアップ広告を提案してくるという状況に変化しつつあり、以前との対比で言うなれば「企業の側が、商品を紹介するよう持ち込む側」であって、「出版社は、激減した売上と広告収入を補填する」という立場に変わりつつあります。
弱い立場で広告収入を得ようとすると、これまで以上に〝出資者の意に添う〟よう宣伝しなければなりませんし、真に取り上げたい商品があったとしても利益相反の関係にある商品であれば、その商品を載せることも叶わない可能性さえあります。
そのようなことを先に見越して広告など一切なしの定期刊行物をプライドを持って作成する出版社もかつては多くありましたが、今時は自治体が発行する刊行物や病院のパンフレットなども企業広告が多く並んでいることも珍しくはない世の中になってきました。後者は、消費者が購入する類のものではありませんが、今後も広告収入の様相は変わって行き続けると想像できます。
雑誌やパンフレットを見たとき広告をザッとみれば出資者が分かりますし、『〇〇特集!』などと銘打っていても、タイアップ広告かな?…という見方も取り入れることができれば、消費者として賢く世の中を見渡すことができるかもしれません。
大切な家族を迎えるために、また、人生に何度も繰り返すことのないビックイベントでもあります。やはり女性ならば特に気を使いますし、家族のために頑張ろうという気持ちになるものです。
以前であれば、妊活中のサプリメントや妊娠線を予防するクリームなどが激戦領域でした。もちろん今でも新商品を開発だのと盛り上がりはありますが、「〇〇に効果あり!」などの表記が厳しくなったことから、次第に化粧品やサプリメント市場から日用生活雑貨にシフトしつつあるようです。薬機法(旧・薬事法)に抵触するリスクもなく、『ベビー専用』『先輩マタニティーおすすめ』などと特集を組めば、いろんな商品にあふれた生活での情報源として興味を引きますよね。
しかし、「赤ちゃんにも優しい」やら「赤ちゃんにも使える」といった何ら明確な基準のない商品を、言葉巧みに飾り立てた宣伝文句が目立つようになってきてしまったのです。
これまでは、何を以てベビー対応の商品なのか基準がなかった生活日用品に、タブーを犯して入り込んできている企業が目に余るようになって参りました。
これまで1番タブー視されてきたことです。
赤ちゃんの肌に触れる衣類はもちろんのこと、タイルやシーツにまで合成界面活性剤でコーティングする意義とは何なのでしょうか。
昔から、「赤ちゃんのモノに柔軟剤を使ってはダメ!」と、そう言われ続けて来ました。それを『時代がかわったから』『これからのママの新常識』などと刷り込ませる目的は企業の利益以外に何があるのでしょうか…。
刺激を減らせて肌に良いと考え、柔軟剤の使用は当然と思い込んでいる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、衣類に残留させている合成界面活性剤の細胞毒性や刺激性を考えたことはありますか?
ただでさえ、合成洗剤の台頭によって大人になってからのアトピー性皮膚炎にも苦労している方々が増えている現状を考えてみてください。今は一見、何も悪影響は無いようにみえているだけで、洗剤よりも刺激の強い柔軟剤を、しかも衣類に残留させている訳です。
かつてアトピー性皮膚炎は成長すれば治る〝子どもによくあるもの〟でしたが、いまや、大人のアトピー性皮膚炎が問題になってきており、患者数だけでなく重症の方も増えていることに目を向けるべきでしょう。
また、吸水性を良くするどころか、繊維の表面を親油基で覆うようにコーティングしているので吸水性は落ちてしまいます。
巷では〝無添加〟な商品が流行っていますが、いったい何が無添加なのでしょう?着色料が無添加というだけで、柔軟剤の主成分は他の商品と同じではないですか?
特に、刺激の強いエステル型ジアルキルアンモニウムは非常に安価なこともあり、多くの柔軟剤に使われています。
大人でも肌トラブルに結び付く可能性のある柔軟剤のなかでも、特に皮膚構造が未熟で薄い赤ちゃんへの使用は避けるべき成分ですので、成分表示を再度確認してみてください。
こちらについても、疑問は同じです。いったい何が無添加なのでしょう?
蛍光剤・漂白剤・着色料が無添加というだけで、洗濯洗剤の成分は他の商品と同じではないですか?
▼以前、洗濯洗剤のすすぎ残しとアトピー性皮膚炎について書きました。↴↴↴
もしご興味があればご一読ください。↴↴↴
生分解性の低い界面活性剤を選ぶのであれば、失活(作用を失う)しにくい成分であることを踏まえて使用しなければなりませんよね。
余談ではありますが、歴史的にも長く使用されている石鹸は、生分解性も高く、皮膚に残っても簡単に失活します。汗や皮脂に触れることで簡単に中和されてしまうのも特徴です。扱いづらいというイメージもあるようですが、その特徴を生かし石鹸を選んで使用している方々もいます。
石鹸が絶対ではありませんし、要所要所で上手く使い分けることが理想的といえます。
便利な世の中になって選択肢が増えてきていますが、歴史の浅い化学物質を使用する際は将来的なリスクは不明なものです。引き続き様々な研究が進んで、因果関係が明らかになるまでには何十年とかかります。
ましてや、日用生活品には全成分を表示する義務はありませんので、全成分開示からのスタートとなります。
ホルムアルデヒド除去のための〝水通し〟も必要ではありますが、洗剤なんて必要ありませんよね。水で何度か濯げば、水に溶けやすい成分の除去は簡単ですし、そもそも24ヵ月までの乳幼児製品にはホルムアルデヒドの規制があります。
考えなければならないポイントがズレてはいませんか?
神経質に考えるにしても、方向性を見失っていませんか?
ご家族は、防しわ加工や形状記憶加工の施された衣類を着て赤ちゃんを抱っこすることはありますし、最近はどんな製品であっても抗菌や防カビ、透湿、防虫…それらの多くは繊維を樹脂で加工させたものです。赤ちゃんのために衛生面に気を使いすぎて、返って加工に使用される樹脂について深く考えることはないでしょう。
そして、赤ちゃんの衣類の残留ホルムアルデヒドを完璧に除去したとしても、合板を使用したタンスに入れて保管したのでは移染してしまいます。ベニヤ合板は、ホルムアルデヒドを含む接着樹脂で固めた木材です。これまで特段の配慮をしてこなかった場合、建物や内装にも使われていることを考えると、もともとホルムアルデヒド規制のある赤ちゃん用の衣類と比較すると神経質に考える必要すらない程なのではないでしょうか。
それだけ、身の回りの生活にはホルムアルデヒドなどの化学物質にあふれています。
衣類用洗剤も然り。
直接身につ付けたり、皮膚に塗ったりするものではない製品だからこそ規制は甘く、そこを企業は逆手にとって根拠も基準もなにもない「赤ちゃんの肌にも優しい」などと宣伝しているCMは目に余るほどです。
そして、衣類用洗剤・柔軟剤のホルムアルデヒドについても指摘されている点をお考えください。
消臭成分を衣類に付着させる樹脂や、香料を長時間放出し続けるマイクロカプセルなどなど、特許を確認すれば樹脂を使用していることは確認できます。さらに〝はじける〟と宣伝していることからも想像できるように、劣化して分解しやすいという事になります。
「無添加」な商品、とても聞こえは良いですが、その程度の無添加レベルなら他にもいくらでもありますし、何が無添加なのか考え直してみる必要もあるのではないでしょうか。
プライドを持って全成分公開したり、製造工程や工法を説明してるメーカーもあります。
「危険なものならば法律で規制されているはずだ!」と思いますよね。ところが、その規制の対象にならない製品もあると、お気づき頂けたでしょうか。そして今、非常に問題視されているのが日用生活品です。
全成分の表示義務のないことを逆手にとって、企業内で安全性を評価したり(非公開)、業界団体で基準を設けたり(非公開)する。そして、何を以て赤ちゃんにも使用できると推奨しているのか、明示してくれません。
その企業は、赤ちゃん用品の開発の歴史はありますか?
素材や成分について表示する義務のない製品こそ、信頼できる企業であるかどうかの判断は必要なのではないですか?
言葉巧みに、オーガニック〇〇、植物由来〇〇配合で安心、ボタニカル〇〇処方、100%天然〇〇配合など…様々な宣伝文句が流行っていますが、その成分名と配合量は開示してくれる企業なのでしょうか。
モノにあふれた世の中だからこそ、その企業が本当に信頼できるのか、CMや宣伝広告を躍起になっている理由についても考えてから判断してみてはどうでしょうか。
▼今回は、たまたまベビー・マタニティー市場に違和感と感じた広告が目に留まりました。↴↴↴
しかし、以前にも増してその手法が巧妙になったと感じ調べてみたところ、以前も同じ出版社の宣伝広告に疑問を持ったことを思い出しました。↴↴↴
まだ、紙媒体の信頼度は高いと感る方もいるかもしれません。しかし、その存在感は薄れつつあり、他に取って代わろうとしつつあります。
それに伴って、広告媒体の在り方も変わってきて当然の流れとも言えます。情報伝達媒体が多様化してきたからこそ、広告媒体も付随して変わっきました。
賢い消費者になるために、メディアに踊らされることなく冷静に考えられるようにアンテナを張っていたいと思う出来事でした。