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洗濯洗剤とアトピー性皮膚炎|皮膚のバリア機能を壊す

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ずっと以前より、洗剤柔軟剤リンスボディーソープなどの合成洗剤は肌に良くないのでは…という議論が繰り返されてきました。洗浄に使用することのメリットもあれば一部でデメリットもあるのは、どんな商品であっても当然あり得ることです。
ただ、合成洗剤の出現、そして普及によって時代とともにアレルギー疾患の分野も複雑化してきたという見解もあり、そのため様々が研究が成されきたというのも事実です。

洗髪の仕上げに使うリンスについては、〝地肌に付けないように、水で流す際には肩などの肌に付かないように〟と周りの大人から教わったことがある人も多いのではないでしょうか。リンスと同じく、衣類の柔軟仕上げ剤の主成分も陽イオン界面活性剤で、〝肌の弱い方や、ましてや赤ちゃんには使ってはいけない〟と長年言われて参りました。

そう言われてみれば、そんな記憶あるかもしれない…と思った方も、そんなこと全然聞いたことないんだけど…という方も、せっかく興味を持ってこちらのページのご覧頂いたのも何かのご縁です。少し身の回りの合成界面活性剤について見返して頂くきっかけになればと思います。



最近では日用生活品にも詳しい皮膚科医院にて、問診で「柔軟剤を使っていますか?」と聞くようになったり、非常に熱心な医師においては〝衣類洗剤の種類〟までアドバイスをする方までいらっしゃるようになってきました。

こういった背景には、化学合成技術の向上とそれに伴って種類が豊富になってきたことも要因にあるのかもしれません。

一昔前から皮膚や腸、血管などその上皮のバリア機能(タイトジャンクション tight junction ※TJ;密着結合)を傷つけてしまう、ということは散々言われては来ていました。今回は皮膚のタイトジャンクションバリアへの悪影響について、アトピー性皮膚炎の標準治療をした上で、さらに日常生活でできることはないか、衣類用洗剤について考えていこうと思います。
ただし、皮膚バリアを傷つけてしまう要因は1つではなく、様々な要因が絡み合っていると言われていることは前置きしておかなければなりません。

新しい合成洗剤の開発競争が盛んに行われている中、我々消費者も一度立ち止まって少し考える時期に差し掛かっているのかもしれません。蛍光増白剤や着色剤などを含まないだけで『無添加』と謳ったり、保湿成分を加えただけで『赤ちゃんにも使える』と訴求したり、耳触りのよい言葉を並べただけの宣伝が多いですからね。
なにも合成洗剤の全てを「悪だ」「排除しろ」というのではなく、メーカーが決して報じない一面を知った上で、CMのイメージに踊らされず自分にあう製品を探せばいいのだと思います。

わずかな濯ぎ残しでさえ皮膚バリアを傷つける

『1回すすぎ可』なんて当てにならない…とはよく言われていますが、洗濯の濯ぎ残しなどの残留成分は、用量依存的に悪影響をもたらしてしまいます。そして、非常に高い希釈度でも、濯ぎ後の残留成分でも、洗剤成分は著しく高い細胞毒性を示し、バリア機能(TJバリア構造)を直接破壊することが分かりました。

皮膚構造中のタイトジャンクション(TJ)バリアは、角層層の下にある顆粒層のバリア機能です。わたしたちの身体は、皮膚の角質層バリアTJバリアの二重のバリアで守られています。
この皮膚バリアは、外界からの刺激から守り、病原体やアレルゲンの侵入を防ぐという役割と、逆方向に体内から外界へ大切な水分が出ていってしまわないようにコントロールする役割もあります。

皮膚のバリア機能が障害を受けると、ホメオスタシスの状態が保てなくなり乾燥してしまったり、外界からの病原体やアレルゲンの侵入に対して免疫反応に異変も生じやすくなると考えられ、角質層バリアとTJバリアの相互的な補完作用についても研究が盛んに行われています。

今回の話は、角質層の下のTJバリアの話。
【図↖論文へ】
わずかな洗濯洗剤やその濯ぎ残しでTJバリアが破壊されてしまい、細胞と細胞の間にできた隙間からアレルゲンや病原菌、毒素などの侵入を許してしいまいます。

それも、かなり希釈した洗濯洗剤でも、さらに希釈された濯ぎ残しでさえも皮膚バリアを壊してしまうことが分かりました。
こちらの報告の面白いところは、皮膚に直接的に塗るものではない洗濯洗剤」の実験であったことと、着用を想定して24時間暴露後の変化を見た点です。

この報告では、どの洗濯洗剤と使用しての実験かあるいは界面活性剤の種類については記載されてはいませんし、商品を比較するための実験ではありません。ですので、身の回りにある非常に身近な日用生活品であっても何かしらの肌トラブルに関係があるかもしれないと考えることが大切なのではないかと考えます。

もし、長年病院に通い続け、治療を受けて来た方がその効果に疑問を持つようなことがあれば、標準治療をつづけつつ、原因の特定と除去も考えるべきなのではないでしょうか。
(基本的に、どんな治療であっても第一選択は投薬ではなく生活改善原因の除去ということが何より優先されるべき部分もあるはずなのですが、日用生活品にまでに及ぶ知識や指導に充てる診察時間を確保するのは難しいのが現状でしょうね。)

最近では〝大人のアトピー〟などと、かつては小児の皮膚トラブルであった意を込めたかのような言い方で、その患者層の拡大を表しているように感じます。特に、アトピー性皮膚炎に関しては人の弱みの漬け込むような商材や、酷いものはマルチ商法や宗教に走るような思想を押し付けるものさえあります。

もちろん、アトピー性皮膚炎だけの問題ではありません。
TJバリアのダメージによって侵入したアレルゲンにより免反応が過剰に起こってしまうよう感作したり、目に見える傷は無いのに炎症状態が起こるのは病原体の侵入が防げない可能性だってあります。現状の皮膚科領域では、皮膚のバリア構造を守るためには〝保湿・保護〟として保湿剤を処方してくれるでしょう。皮膚を守る方法はそれが全てではないんだな、と気づく機会になれば幸いです。




また、今回とりあげたTJバリアというのは、皮膚だけに存在するバリア機能ではありません。今回はヒトの気管支上皮細胞を使っての実験でしたが、皮膚のように角質層のないような器官では、このTJバリアに委ねられているといっても過言ではありませんよね。
皮膚の場合、特に外界からの刺激を直接的に受けるので角質層バリアの役割が重要となってきます。逆に、角質層のない他の器官や臓器はのバリア機能は、皮膚に比べて圧倒的に弱いものなのです。特に最近は、空間に持続的に放出させたり、スプレー剤を撒いたりして空気中に常に漂わせる製品もあり、そのような大気環境では、ヒトの気管支上皮細胞を使った今回の実験と同じような結果になりかねないのではないでしょうか。

非科学的で過剰な清潔思想が蔓延し、なんんでも除菌することが『普通』…かのようなテレビCMを多く見かけます。しかし、合成界面活性剤の細胞毒性を利用した除菌スプレーなど、いつでも店頭で手に入る世の中になってしまったからこそ、消費者個人個人が考えなければならない問題だと思います。

TJバリアの制御と創薬

TJバリアを制御して、薬物の吸収を促進させる技術に応用できないか、という研究もあります。(細胞間隙経路を介した薬物吸収促進技術)
注射に代わる方法として、経皮や経鼻、経肺、経口などの投与方法でこれまで以上に吸収を促進させられるような研究もされています。

また、脳の中には異物が侵入しないように血液脳関門(BBB)というバリア機能もあります。重要な中枢神経の機能に支障がでないための脳のバリア機能ではありますが、脳に大切な薬を行き渡らせたくても難しい場合にも有効な技術になります。TJバリアの細胞間接着分子をコントロールできれば、非常に有用な薬物吸収促進方法にもあるわけです。

逆に、アトピー性皮膚炎や炎症性腸疾患などではTJバリアのダメージが指摘されていて、TJバリア機能の破綻によって状態のさらなる悪化につながっていると考えられているので、今後TJバリア機能の解明が進めば、TJバリア機能の破綻によって引き起こされた病気の治療に役立てらる可能性もあります。

それほどまでに、タイトジャンクションバリアの機能は大切なもので、私たちの身体を守ってくれているのもなんだな~と分かる例として書かせて頂きました。


TJバリア機能を守るには

残念ながら今回の報告は、商品や成分を比較するための研究ではないので、どんな洗剤を使えばよいかなども分かりません。分かることは、〝洗濯濯ぎの重要性〟です。

洗濯洗剤は皮膚のバリア機能を傷つけてしまう可能性があることを意識してみましょう。
そして、身の回りの消臭除菌スプレーにも界面活性剤の細胞毒性を利用した商品もあります。いつも使用してる商品と使用方法も少し見直してみると自身やご家族の将来の健康を守れるかもしれません。

①洗濯の「濯ぎ回数」を増やす

1番に思いつく簡単な方法ですね。
最近は「エコだ」「時短だ」と洗濯物1回濯ぎも可能という商品も多くなってきました。見た目で判断し、泡立たなければ『泡切れが良い』という判断をしてもううのでしょうか。なぜ1回濯ぎでも良いという使用方法を記載するに至ったのか分かりません。
少なくとも、LAS直鎖アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩)を含む洗剤で「1回すすぎ」は余程のことがない限り基本的に避けた方がよいのではないでしょうか。

ましてや、昨今の合成洗剤には〝酵素〟も配合されていることが多いですよね。洗浄成分の補助的な役割で、タンパク質脂質を分解しやすくするために配合されているもなので、当然、その濯ぎ残しの残留酵素で皮膚もダメージを受ける可能性が高くなります。

一見泡切れが良いように見えても、1回で大半の洗浄成分(界面活性剤)を洗いながせるはずがありませんし、他の助剤も含めて考えなければなりません。

②「節水型」の洗濯機…

最近は「節水なんて当たり前」の時代です。

ですが…使う水の量が減るということは、水に流れ出る洗浄成分の量は減る、ということですよね。いくら時間をかけても、水に溶け出る洗浄成分の溶解度がは変わらないことは基本です。
節水機能の開発には様々な技術が使われているようです。ですが「シャワーすすぎ」や「遠心力」で洗浄成分を分離するなどと節水機能競争になってきていますが、その基準すら、商品競走のために節水度が進化したかのように思わせるようなものでもあります。特にドラム式ではその傾向が顕著で、節水機能が高いとはいえ、色移りや黒ずみも気になると世間の評価も既にるとおりではないでしょうか。

衣類が黒ずんでしまうということは、汚れ落ちが悪かったか、再付着してしまったか。それほど節水機能というのが競争領域にされてきていて、「洗濯」という本来の目的から路線が外れつつあるような気さえします。汚れも残りやすくて、洗浄成分も残りやすいのであれ考え物ですよね。

洗濯機にも縦型式とドラム式があるので、それぞれの特徴を生かしつつ自分の家庭にはどちらをどのように使うべきかよくよく考えてのことかと思います。さらに、節水による濯ぎ残しの可能性についても改めて考えてみてはいかがでしょうか。

③成分を選ぶ…

なかなか成分表示をみた上で洗濯洗剤を選ぶ方ということは、かつては少なかったと思います。ただ、今はネット上で様々な情報が手に入るようになり、界面活性剤の研究もされていたかずのすけ先生をはじめ多く方が情報発信されていいますよね。

洗濯洗剤などの直接皮膚に付着させるものではなくても、わずかな残留成分で本来の皮膚構造を壊してしまうことが分かってきました。特に皮膚に直接触れるような肌着などインナーに関しては、汗をかくことで残留した界面活性剤により皮膚のバリア構造を乱してしまう可能性がありますし、風呂上りや洗顔後、汗を拭いたり、手洗い後に使用するタオルについても同じように言えます。

また、いま流行の衣類の柔軟仕上げ剤も合成界面活性剤を主成分とする商品が大半なのですが、そのような柔軟剤を使うことが肌のトラブル対策だと思っている方も多くいらっしゃるようですね。
せっかく何度もすすぎをして、洗濯洗剤のすすぎ残しが無いように気を使っても、また最終すすぎで界面活性剤を付着させることに気付いていらっしゃるでしょうか。

柔軟剤の成分のメインが陽イオン界面活性剤です。陽イオン界面活性剤は殺菌作用もあわせ持つため、その刺激性は洗剤よりも強いとされています。

衣類のキシミ・ゴワツキの原因は〝陰イオン界面活性剤の残留〟にあるので、最初から陰イオン界面活性剤を含まない洗剤を選ぶことや、すすぎ回数を増やすなどの対策をとるのが第一と考えられます。

衣類用の洗剤などが、まさか肌トラブルに結び付いていると気付かない方も潜在的に多くいらっしゃるのではないかと言われています。衣類は常に肌に触れているものなので、日々それなりのダメージとなっている点も考えていくことが結果として美肌につながるかもしれません。
何か高価な化粧品や美容クリーム、美容サプリを購入する前に、もっと身近にあることから考えてみてはいかがでしょう。

美容にお金をかけるよりも、経済的な負担も少ないですし、せっかく美容サロンに定期的に通っていても、日々の生活のなかで皮膚バリア機能に負担をかけてしまうのはもったいない事だと思います。

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