福島県郡山市の6月定例会にて、品川万萬里市長が「タバコは薬物」と答弁したことを巡り、真意を問いただすなど発言を訂正し謝罪を要求する議員がいらっしゃいました。
そもそもことの発端は、6月4日に日本禁煙学会の医師が品川市長を表敬訪問、2020年11月に開催される日本禁煙学会の学術総会の協力を依頼したときのこと。
その際「タバコは嗜好品ではなく薬物。市民の健康を守りたい」などと、医師と市長との間に対話があったことに対し、市議が批判したという内容です。
医学的に「タバコは薬物」であり、謝罪を要求する議員の認識が誤りなのです。
その議員らは、葉たばこ生産農家などから多くの支持を得ることしか考えていなかったのかもしれません。
己の損得勘定だけで、「市民の健康を守りたい」とする市長の想いを妨害することは許せません。
東北地方には葉タバコ生産地が各県にあり、福島県は、岩手県に次ぐ広大なタバコ作付面積があります。
福島県選出の議員のなかには、タバコ業界からの献金を受けている方々がこれまで複数名いらっしゃいます。
タバコ業界と密接なつながりのある地域では、葉タバコ農家やたばこ販売協同組合などの指示票を失わないよう、また、JTの協力で環境整備を行ってきた影響がいまだに強く残っています。
そんな土地柄とはいえ、受動喫煙対策を不完全なものに歪めようとする動きは、時代に逆行しているとしか感じません。
健康増進法を後退させ、市民の健康を脅かし続けることを容認する議員は、その責務に相反しています。
当日は5人の議員による質疑、そのうち以下2人の議員が「タバコは薬物」発言に言及し、批判した。
質問:「タバコは薬物」と発言したことは事実なのか?タバコまたはニコチンには程度は弱いものの依存性があります。しかしながら、タバコまたはニコチンの薬理学的特性は、原則的に所持・使用・販売等は禁止されている薬物(麻薬・覚醒剤・大麻等)とは異なる合法物質だと思います。
→→〔保険所長〕医学の分野においては、生体へ薬理作用を及ぼす化学物質を薬物と称しています。厚生労働省『喫煙と健康~喫煙の健康への影響検討会報告』より〝たばこ製品について〟引用。
再質問:「市民の健康を守りたい」という気持ちは分かるんですけども、郡山市にはタバコ生産農家もいますよね。タバコ生産農家はそれで生計をたててますよね。それをあたかも覚醒剤と同じような薬物っていうと、市民の皆さんそういう判断する場合もありますよね。これを中核地のトップリーダーとして、発言としてはいかがなものかと思いますが、謝罪等の説明責任は。
→→〔品川市長〕医師と面談中であり、学会を開かれること、医者を相手ということで医学的所見に基づいて発言したもの。
再々質問:新聞報道を見る市民は「え。タバコって薬物、覚醒剤と同じ扱いなの?」て思う人もいるじゃないですか。だから私は、郡山市のトップリーダーとしてそういった発言はすべきではないではないかと思うのですが。
→→〔品川市長〕医師との対話の中での発言。これからTPOよろしく、どなたと話をするのかということを念頭に十分言葉を選んで参ります。
質問:生産農家さんをはじめ、商売として扱って販売されている方、嗜好品として吸っている方もいらっしゃると思うんですけど。その方に対してこんな侮辱はないと思うんですよ。この方々へ一言お詫びを。
→→〔品川市長〕医師との対話の中で医学的所見に従った発言を致しました。今後ともどなたと話をするのかというのを前提に、お話をさせて頂きたいと存じます。
再質問:その薬物を吸っている方も、作っている方も、販売している方も市民なんですよ。その郡山市民に対して、あなたが薬物を薬物と侮辱した市民に対して何か一言あるか。
→→〔品川市長〕医学の分野においては薬物と称しておるということでございますので、そのことをご理解頂きたいと存じております。
◆平成30年郡山市議会6月定例会市政一般質問表:http://www.city.koriyama.fukushima.jp/683000/gikai/documents/6ippansitumonhyou.pdf☜
〝タバコに含まれるニコチンは依存性を形成する薬物(ドラッグ)です。議員の考えが正しくない。〟
医師の表敬訪問にて、医師との対話中に医学的所見となるタバコの位置づけについて発言したものであり、「タバコは薬物」との発言を撤回したり謝罪するには及ばない問題です。
議員らは大きく分けて2点の間違った認識をされています。
佐藤栄作議員は、「タバコまたはニコチンの依存性は、程度は弱いもの」という認識のようです。
しかし、タバコは〝アルコールよりも強い依存性をもたらす薬物〟であることは、世界の常識となってきています。
昔から日本ではタバコがいつも身近にあるため錯覚してしまいがちですが、喫煙欲求をコントロールできない人間はニコチン依存症です。
アルコール依存症には病気という認識がありますが、ニコチン依存症には触れてはいけない大きな圧力を感じます。
そんな危険な薬物であれば、誰でも買えるはずがないだろう・・・という思われる方もいらっしゃるかと思いますが、ニコチン依存症を禁煙外来で治療でき、健康保険制度の適用となっている時点で厚生労働省も認める疾患なのです。
そして、自らの意思で禁煙をできないまでに至った場合は精神疾患として扱われ、他の精神疾患も併存する割合も多くなります。
上記までにも触れましたが、薬物とは「生体へ薬理作用を及ぼす化学物質」です。
病院で処方される医薬品も、店頭で購入できるアルコールも薬物であるように、「タバコは薬物」です。
そんな医学上正しい発言に対して『侮辱だ』『謝罪を』『説明責任を』と市長に糾弾する議員の発言こそ、訂正するべきではないでしょうか。
議員が「タバコは薬物」という発言に、勝手に禁止薬物を連想し騒ぎ立てただけの問題ですが、議員の認識不足を露呈する結果となりました。
その議員の支持層にタバコ事業関連の方が多く、その票田で存在感を示すために質問された内容かと思われますが、その認識を改める必要があります。
特に前川光徳議員は、わざわざ関連質問という場にまで枠をもらい質問する内容ではなく、今後の言動にも注視していきたい。
そのことを受け、日本禁煙学会(作田学理事長ら)は、「たばこは薬物」との見解を発表しました。
稲本望医師(日本禁煙学会理事)は、『タバコは薬物、と答弁した市長に議員が反論しました。よって日本禁煙学会として、タバコは依存性を形成する薬物であることをアナウンスしました。』…とコメントされています。
「覚せい剤やアルコールよりも強い依存性をもたらす『薬物』であることが多くの研究で明らかになっている」、と説明。
また、「喫煙習慣の本質はニコチン依存症」としている厚生労働省の禁煙マニュアルも紹介しています。
◆タバコは薬物である〔日本禁煙学会〕:http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/information/2018625t.pdf☜
見解では、「タバコは日本人の健康寿命を縮める最も大きな原因の一つである。受動喫煙による死亡者は2010年に
6800 人、2016年に1 万5千人と推計された。現在はタバコによる死亡者総数が15万人台
に増加していると考えられる。」と受動喫煙問題にも触れています。
受動喫煙対策をタバコ業界の圧力で歪めようとする背景もあり「タバコは薬物」発言に批判的な人間に対し、化学的根拠に基づいて、医学的な見解をまとめた文書となりました。
今回、同日の定例会にて質問された森合秀行議員は、敷地内禁煙により路上喫煙者からの受動喫煙の懸念、庁舎内でのタバコ販売の矛盾など具体的かつ市民目線での質問をされていらっしゃいます。
本来、議論の場となるべき場では、このような建設的な質疑があって然るべきであると感じます。
自らの認識不足で、市長の発言に対し何度も批判を繰り返した議員は、真に市民のことを思いやっているのか疑問です。
市長は、市や県の産業としてタバコ関連企業の影響が強いなか選出された方です。特に品川市長の素晴らしい点は、受動喫煙から市民を守るだけに留まらず、職員も守られるべきという考え方です。
この件が問題となった前後で、穴見陽一衆議院議員(大分1区)によるステージ4の肺がん患者への「いい加減にしろ」発言があり、そちらの報道は全国の多くの方から問題視されました。
6月15日の衆議院厚生労働委員会に参考人として招かれた方への暴言で、同月21日に報じられたものです。
参考人として招かれた他の医師が受動喫煙防止の重要性について説明していてる最中にもヤジを飛ばし、患者が体調も安定しないなか参考人として呼ばれた立場にもかかわらず「いい加減にしろ」と複数回ヤジを飛ばしたと報道がありました。
同席した自民党議員で、ヤジを飛ばす穴見議員(ヤジ議員)を見ながら笑ったいた方もいるという…。
報じられた同日21日お詫びのコメントを出したが、とても謝罪とは言えない内容であり、わざわざ釈明文を記載したことに対してさらに批判が強まりました。
大分がん研究振興財団の理事を務めていたこと(2007年から)にも批判を浴び、同月22日に同財団の理事を辞任する届出があり、理事長は辞任届を受理したという。
その後、同月25日付で肺がん患者へ個別に、改めて詫び状を送ったとのこと。(受け取ったのは28日)
自ら代表取締役相談役を務めるファミリーレストラン『ジョイフル』の受動喫煙対策にも触れ、「店舗内の完全禁煙を実施する試みも現在はじめているところです」とした。
しかし、このヤジ問題発覚後から表には出てきておらず、これまで書面でしか公けな動きはなく、穴見議員は27日の厚生労働委員会を欠席した。
…これらの問題の根底には、同じようなものがあると感じます。
企業からの献金、たばこ族議員の利権問題、業界関係による組織票の獲得、さらに、それまで支持をもらってきた有権者からの圧力が本人に振り返って、悪循環に陥ることになります。
そして、議員自らが喫煙者であり既にニコチン依存症である場合、その疾患由来の認知の歪みから、自分の意に反するタバコの話題となると『差別だ』『侮辱だ』『権利がある』と論点がすり替わります。
国民の健康について審議しているはずの議員から、このような発言が相次いだことで、本当の意味で国民の健康を守ろうとしているのか疑って政治を注視する方が多くなって来ています。