先日、大手航空会社の旅客機に搭乗。そこで、有無を言わさず喜ばれることが当然とばかりに差しだされるアロマおしぼり。
所詮、日本の「おもてなし」のレベルはこの程度で、何ら思慮もなく軽率なサービスを強要されなければならないのか、と違和感を覚えました。
大手企業ともあろうものが、今流行りの〝香りビジネス〟の口車に乗せられ、情けないとは思わないのでしょうか。
なぜ、わざわざ食事の際に合成香料を嗅がされなければならないのか?食事やドリンクを楽しむ時間に、無駄で余計なサービスだと考えも及ばないのでしょうか?
ドリンクも楽しみに、また、機内食も事前予約されたりする方も中にはいらっしゃいます。正直に言っても、控えめに言っても、香料のサービスは邪魔です。
ラウンジには、以前から香りによる空間演出サービスがありましたが、不快に思うのであれば〝行かない〟選択肢を選ぶことができます。当然のように、飲食店であればお断りすることも、店を変更することも可能です。
しかし、高気密な機体の中では、当人がお断りをしたとしても周囲の香りを感じなければならず、すなわち選択権はないサービスを強いられることとなります。
週刊金曜日の「香害」最前線 ≪岡田幹治≫では、近ごろの過剰とも言える香り空間サービスについての調査をまとめています。
旅客機の機内やホテルで最近盛んになりつつあるアロマサービス。
機内について「香りつき」と「香りなし」のどちらが望ましいか尋ねた結果59.2%が「香りなし」を選んだとのこと。「香りつき」を選んだ23.6%の2.5倍となることが分かりました。
約6割の方が望まないという結果。
● 無料のサービスを施してあげてる
● 誰もが心地よいと感じる香り空間である
● 香りサービスを嫌がる人間などいるはずもない
思い込んでいるとしたらば、こんなところだろうと思います。搭乗クラスに関わりなく全員にこのような選択肢のないサービスを導入したのだろことは、その浅はかさが容易に想像できます。
初めての慣れない環境に不安を覚える方、障害や病気やケガでお困りの方にも安心・安全に飛行機の旅を楽しんでもらおうという動きから、最近、お子さん連れの搭乗体験などの企画も多く耳にするようになってきました。
また、障害はなくとも一時的に体調を崩されている方、里帰り出産を控えた妊婦に方など様々な事情を抱えた利用客の方もいらっしゃることを考慮にいれなければなりません。
「発達が気になるお子さんに安心・安全の旅を」https://h-navi.jp/column/features/jal☜
このような弱者に寄り添う企画も多くある中、〝香り〟によって健康に悪影響を受ける人間もいることに考えも及ばないのは、やはり社会福祉後進国であることを酷く実感します。
未だに、障害者は車椅子に乗っているはずだ、バリアフリーは段差をなくす設備的な問題だ、と思いこんでいる人間も多くいるのが日本です。また、無理に飛行機に乗ろうなんて考える方が図々しい、と健常者中心の生活に足並みをそろえさせようとする考えが多いのも、先進国の中では日本くらいなものです。
香り空間サービスについても、同じように言えます。
空気にも「バリアフリー」が大切です。いまや〝他人の吸う空気を汚してはならない〟というのが世界スタンダードとなっています。(日本ではいまだに、受動喫煙問題ですら一定の評価を得るまでにも程遠い…)
近年、〝香害〟という言葉が広まり、香料の暴露に苦しむ人間が増えてきました。香害は柔軟剤の香料だけではありません。(さらにミレニアル世代にはフレグランスフリーこそが体臭エチケットとして浸透してます…)
発達障害にも、「感覚過敏」「感覚鈍麻」の双方がいます。その各々の特性をよく理解し、安全・安心の空の旅空間を提供しようという主旨から離れています。聴覚であれば、ノイズキャンセラーや防音用イヤーマフ、聴覚保護具で対策をすることが可能です。
しかし、香料は空気中を舞い広がります。
発達障害の方の中には、慣れない香料刺激でパニックを起こしてしまう方もいることを考慮しなければなりません。刺激によるパニック状態を落ち着かせるために、自分だけのアロマオイルを調合し、必要な時に自分だけで嗅げるように持ち歩いている方もいらっしゃいます。
それくらい、香料は人に与える影響も大きく、安易に取り入れて良いサービスではありません。
また、発達に関係なく、持病で香料に悪影響を受けることもある点を思いつきもしないのでしょうか。
食前の香料おしぼりで片頭痛が悪化し、食事どころではなくなり、場合によっては嘔吐する方もいらっしゃいます。おしぼりのために薬を服用しなければなばならない、そのようなサービスは必要か冷静に判断できませんか。
また、香料にはアレルゲン性合成香料も多く存在します。余計なリスクを機内に持ち込み、「すべてのアレルギー源の排除をお約束することはできません」と回答するのは、サービスとしての優先順位を判断できない企業なのではないかと不信に思いませんか。
アロマサービスさえなければ問題なく安心・安全に過ごせるにもかかわらず、「酸素ボンベなどの持ち込みは、お客様各位でご用意と申請を」と呼吸器に不安のある方に提案するのは、もはや正気の沙汰とは思えません。
このように、感覚鈍麻症は表面上問題になりにくいことが多い反面、感覚過敏やその傾向のある健常者が一番我慢を強いられる状況を今一度考え、改める必要があります。
もう一度書きますが、柔軟剤だけが「香害」ではありません。
柔軟剤メーカーと同じ自主基準を以て「香りビジネス」をサービスとして提供していることが分かりました。
耳を疑いましたが、最終決定者に従うしかない雇われにとって、精一杯の回答だったのだろうと思います。
当社で採用している香料は、国際基準IFRAに準拠したコロンを採用しています。
どなた様にも安心・安全の香料をエタノールに溶かし、おしぼりに香りを付けています。
ここに 2点 、違和感を感じた方。その感覚を大切にして頂きたいと思います。
考えさせないトップダウン式の教育が色濃い日本では、世の中の事象に疑問を持つことすら否定されることも多いと言われています。そのような日本の教育の歴史からすると、とても貴重な存在です。
まず、 アルコールを使用している時点で、誰しもが安全に使用することはできません。
これは、当然のことです。単に日常でいうところの〝お酒に強い〟or 〝弱い〟だけの問題ではありません。
例えば、予防接種や献血などの際、事前に「アルコールでかぶれたりしたことありますか?」と聞かれます。これは、アルコールの刺激に対し接触皮膚炎やアレルギー症状を引き起こしてします方が一定数いるからです。
さらに皮膚で起こることは粘膜でも起こりうることで、揮発したアルコールが鼻粘膜を刺激し、鼻腔が炎症を起こし鼻閉。これが気道で起きれば、気道閉塞を起こします。(電車内で汗ふきシートを使用した方により喘息発作を起こした事例にも類似)
これが高気密な機体の中で、万人が喜ぶサービスだと疑いもせず導入を決めた方は、浅く狭い了見しか持ち合わせていない方ではないかと疑いを持ちます。
そして、 香料は、高残香性柔軟剤の市場を多く占める某洗剤メーカーも同じ く、「香料成分はIFRAスタンダード(国際香粧品香料協会)に準拠しています」と主張するばかりです。
しかし、香害問題は収束するどころか被害はどんどん拡大している現状を考えると、その安全性の自主基準は本当に信用できるものなのか疑問点が多いと解釈するのが至極当然ではないでしょうか。
事実、香料に関する国独自の規制もない日本などアジアでの市場が注目され、事の始めに日本がターゲットとなっている次第です。大概アジア市場は、まず参入しやすい日本で反応をみてから。迅速に法規制がされることはなく、さらに新しいもの好きです。
今回の機内での香料サービスについても、素直な日本人は〝基準をクリアした〟と伝えれば、納得させ受け入れさせることができると考えたのでしょう。
しかし、そのIFRA基準には疑問点が多いと指摘されており、その基準を上回る法規制により実質意味を成さないものとなってる国や地域もあります。
◆以前、IFRAについて少し触れたことがあります。↴↴↴
自らの香料業界内で国際基準をつくり、一方的に安全基準を定めているだけのことであり、産業側の研究内容はほどんど公開されておらず、文字どおり『自主基準』に他なりません。
また、米国の消費者団体が、IFRAの公開した約3000種類の成分を解析したところ、1000以上が「懸念ある化学物質」として国際機関などの公式リストに掲載された物質を含んでいました。
◆また、日本消費者連盟でも指摘されています。↴↴↴
IFRAメンバーが使用している人工香料物質の約3000種類を情報開示、GHSで評価し直すと、その 約半数が〝危険性あり〟とされる成分であること が分かりました。
※GHS:国連で採択された化学物質の分類および表示に関する世界調和システム。
そのGHSマーク数の内訳は急性毒性を含み、全て「香料」とのみ表示され何を含有しているのか確認することはできません。
食事の際に香りサービスを提供するというセンスも疑うが、〝快 or 不快〟で済まされない問題であるのはご理解いただけたでしょうか。
また、香りサービス提供時、その場では〝快 or 不快〟で収まったとしても、後から体調を崩される可能性も大いにあります。
例えば『気管支喘息』、その場で顕著な症状が現われないことも多く、夜間の咳や息苦しさ、また酷い時には横になることもできない程にまで。朝方、酷く咳き込み発作を起こすというパターンもあり、夜間~明け方に症状が現れやすいという特徴があります。
香料やタバコ等により気道が過敏状態となり炎症を起こし、そして、夜間の睡眠時に副交感神経が優位になることで、日中に抑えられていた症状が現われやすくなるため夜間~朝方に悪化しやすいのです。
無理解な方ほど、その場でゼーゼー・ヒューヒューする呼吸音があるはずだと思いこんでいますが、それは一部の重症の方のイメージです。そのような典型症状を示す患者ばかりではなく、また、そうならないために周囲が配慮する必要があります。
上記に挙げた重症例だけではなく、喘息には個人差があります。症状の現われ方も人それぞれで、原因を遠ざけて直ぐに治まるという誤った認識を改めなければ、喘息死はいつまでたっても無くなりません。
今回は『気管支喘息』を例に挙げました。
飛行機の機内の気圧は、ある程度一定にコントロールされているとは言われていますが、変動はゼロではありません。気圧が下がると呼吸が苦しく感じる方もおり、長期フライトでは睡眠をとらないよう(副交感神経が有意にならないよう)に注意して搭乗する方までもいらっしゃいます。
香りサービスを提供することを優先するために、吸入薬や酸素ボンベの用意をさせるという考え方で「安心・安全の旅」ができる企業といえるでしょうか。
そのような、見分けだけで判断できない弱者も機内に搭乗している可能性を考えない航空会社。接客業の最高峰としての認識から外れました。
また、個人の体質だけなく宗教上の理由も配慮に入れるべきではないでしょうか。
ムスリムの中には、口に入るアルコールだけでなく、消毒用アルコールなども一切使用しない方もいらっしゃいます。まだ身近に触れる機会のない方も多いかもしれませんが、『ハラール認証』も知名度としては上がってきています。
製造過程で一切アルコールが生成しない商品にこだわる客には、香料についてどのような説明をされるのでしょうか。そもそもエタノールに香料を添加したものを受け入れさせるのでしょうか。
航空会社側は、香料成分についての詳細な情報を持ち合わせておらず、すべてを香料協会側の企業に任せています。
法規制のない日本では、香料はただ『香料』と記載すれば何を添加させても自由となりますが、その自由な競争領域で〝香りビジネス〟の暗躍は続きます。各国の規制から逃れ、次なる日本市場の拡大は絶対必須となっています。
香りビジネスを仕掛ける企業側は、嗅覚による中枢への刷り込みを目的としてサービス導入を提案してきます。
嗅覚は、感覚の中で最も原始的かつ本能な感覚で、香りは理性にコントロールされることなく、感情や記憶といった中枢部分に直接働きかけるといった作用がある。
感情をつかさどる扁桃体や、記憶をつかさどる海馬など。
刷り込み効果が絶大であり、購買欲を高めたり、また来店したいと思わせる効果もある… 、としている。
もともとフレグランス文化が未熟であり、アロマオイルとエッセンシャルオイルの違いすら良く分からない日本は、香りビジネスに取り込みやすい市場です。
既に、頭の先(整髪剤やシャンプーなど)から指の先(ハンドクリームなど)まで一貫性のない香料を纏わせている日本人は、世界の笑いもの。体臭と馴染むよう繊細に設計された香水などについて、フレグランスの使い方から学ぶべきではないでしょうか。
ちなみに、〝おしぼり〟の提供は日本独特の分化です。食事の際にレストランでおしぼりが出てくることはありません。汚れているならば、洗面所に行き手を洗うのが通常の考え方です。
「おもてなし」としては素敵な文化なのですが、心地よさの演出をするにしても食事の際に香料製品を提供するのは、完全にマナー違反です。食事に行く際も、香水の付け方によっては入店を断られる店もありますので、ご注意を。
香りサービスを提供をお断りする方がスマートかと…自分のためにも、周囲の方のためにも。そういう結論に至ってしまいます。
そもそもが、個人の体質に合った精油を調合してもらい、個人で楽しんだりするアロマテラピーを混同されているような方も未だに多い。精油についても、日本では流通に規制などなく、ただの雑貨扱いであるため、出所と品質、ブレンド技術の信頼できるところでオーダーしなければなりません。そのようなアロマの概念もあやふやな日本では、不特定多数に同意もなく揮発性有機物を一方的に吸わせることがサービスだと思い込んでしまっているのでしょう。
合成香料をアルコール基材に溶かし、合成界面活性剤で安定化、さらに揮発性を調整する保留剤を助剤をして添加しているもの は、安価で簡単には手に入るため、コストパフォーマンスを考えても導入しやすいサービスです。
さらに、この企業で採用している「香りおしぼり」の香料成分は、企業側は把握していません。協会の基準を遵守した香料なのでメーカーに任せている、とのことでした。
精油に比べ圧倒的に安価に安定供給でき、品質の劣化しにくく均一を保ちやすい香料で、一方的にサービスと称して提供されても迷惑に思う人間も多いというアンケート結果からご紹介致しました。IFRAなどの香料協会による自主基準の信頼性を含め、冷静に考えてみてください。もちろん、天然の精油であれば良いというものではありません。
国土交通省に見解をお伺いしたところ、エタノールの引火性や、香料による空調の不具合につながる可能性についても今後注視するとのことでした。
精油類であっても、キャリアオイルを含めて引火性液体として「消防法」上の第四類危険物に属します。この第四類には引火点が25℃以下のアルコール類も含まれます。(引火点と発火点の違いについては、省かせて頂きます。)
引火性液体は、可燃性蒸気が空間中に揮発し大気と混ざり合うため、何かしらの点火源の拍子に遭遇してしまった事態を危惧しなければなりません。
殊に機体は高気密な空間、その空間に可燃性蒸気が充満した状態で、もし万が一にも充電器やバッテリーの発火などあれば爆発は小規模なものでは済みません。また、最近日本では加熱式たばこを禁煙の場所であっても喫める…とマーケティングに躍起になっているメーカーもあります。加熱式たばこの温度は300℃を超えるものもあり、さらに爆発発火事故も起きています。
(バッテリーや電池などは機内持ち込みとなる)
様々な角度から考えても、香り空間サービスは「安心・安全」とは矛盾したものであり、特に航空会社のサービスについては危険さえ伴う可能性があります。
◆今回、この航空会社の比較に、面白いと感じた本がコチラ↴↴↴
今回挙げた航空会社からは、いかにリピート客の獲得を図るのか、マニュアルのない「気配り力」など帯まで付いた書籍もでているが、結局はトップダウン式。余計な香りサービスを迷惑に感じ人や、健康に何かしら悪影響があることなど考えも及ばないのでしょう
マニュアルはないなどとボトムアップ式で現場の判断に任せているかのような企業でも、いまだグローバル企業とは思えないような思想がまかり通ってしまうのだな、といった感想を持ちました。
一方、会社の規模や業種は違えど、山田昭男氏の考え方こそ今の日本に欠けている部分なのではないかと思います。
※航空会社については、ご自身でお調べ頂く方法が確実です。あるいは、添付URLを参考にお調べください。今回は「香りおしぼり」についての話題から、とある航空会社の過剰なサービスを例に挙げました。
こちらをお読みになっている方がお調べになる頃には、このようなサービスなど取扱いはなくなっていることを期待します。
少なくとも、全クラスで一斉に「香りおしぼり」を使用し、狭い座席の乗客にまで提供するようなものではありません。
最後に。
余談ですが、日本のエッセンシャルオイルのマッサージを受けた時、香りを強く感じさせるため、わざとらしい演出が多くて残念でした。アロマディフューザー、アロマバス、アロマキャンドル、香り付きトイレタリー・アメニティー…あらゆるものに香りを付け、台無しとはこのこと。
精油の香りが強ければ強い程、種類が多い程、効果があるものだと思い込んでいる人が、いかに多いかの現われではないでしょうか。
(香りが弱かったり、残らないと、苦情でもあるのでしょうか…)
そこまで強く香りを実感する必要はなく、むしろ香らなくても良いくらいです。
良質なエッセンシャルオイルによる芳香性物質を優しく身体全体で感じることが何よりのリラクゼーションですし、アロマテラピーの本質です。
【写真】こちらは、施術後の休憩室。
水分補給にローズヒップティーを頂きながら、青い空、青い海、そしてプライベートプールという贅沢な空間。
もちろん、施術に使ったエッセンシャルオイルの香りは感じない程に優しく、すぐにディナーにも行けました。
香りビジネスに惑わされることなく、賢明で冷静な判断のできるようアンテナを張って周囲を観察してみましょう。
きっと面白い発見があります。
そして、日本人には、桜の香りも感じ取れる繊細な文化を大切にして、その文化に誇りを持って欲しいと思います。
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私は突発性喘息があり、ダウニーなどの強烈な悪臭により咳が止まらなくなることがあります。
このような記事は悪臭をばら撒いている使用者本人の自覚を促すため、より多くの人の目に止まって欲しいと願います。
ここ最近はこのような強すぎる合成香料のせいで喘息がなかなか収まらず、咳止めや抗アレルギー薬が手放せません。
私ができることとしてはGoogleマップのローカルガイドとして、香害お断りを前面に出しているビジネスを積極的に応援(評価対象として★を付ける)したいと考えています。