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花粉症の増加・悪化は大気汚染が原因|PM2.5やVOC、NOX、SOX

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PM都心に引っ越したら、自身の花粉症が悪化した…そんなことも「都会人デビューだね」とネタのように言われたり、都心に行けば皆んな花粉症になるとネタのように軽く考えられてきた問題ですが、最近の研究で花粉症についても大気汚染がアレルギーを引き起こす原因になっていると分かってきました。

なぜか、メディアでは、戦後に植林されたスギの木に問題があるとしか触れません…。
たしかに、樹齢30年を超えたスギはたくさんの花粉を毎年ばら撒くようになります。しかし、花粉の少ない種類のスギに植え替えてくしか方法はないとする解説も、そんな数年~数十年で植え替えられるものではない…などと意味ありげに余韻を残し今後の課題を提起するカタチで締めくくろうとする説明も薄っぺらいな、と感じます。

いまや、花粉症はスギだけではないですし、地域が違えば花粉も異なってもきます。1年を通して考えても、スギ花粉だけでなく、ヒノキイネ科シラカバブタクサなどなど、他にも様々りますよね。
他の種類の花粉も増えているということなのでしょうか?
もし仮にスギ花粉の飛散量を減らせたら、この問題はなくなるんでしょうか?

イネ科やブタクサにように、植林とは関係のない雑草の花粉症もあわせもつ方まで多くなってきました。飛散する花粉数をコントロールできないイネ科やブタクサの花粉症に悩む方々も多くなっています。

そう考えると、花粉の少ないスギの植樹ですとか、何十年が経っても成しえない事があたかも唯一の解決策かのような内容が嘘っぽく感じませんか。今回、本当に花粉の飛散量は増えてるのか、重篤化させる他の要因や最近の研究について調べてみようと思いました。


都民でスギ花粉症の割合

東京都では、ほぼ10年おきに花粉症患者実態調査をしています。最近の調査は平成28年度に行われ、平成29年3月の花粉症検診までを追った調査です。
花粉症患者実態調査
http://www.tokyo-eiken.go.jp/kj_kankyo/kafun/jittai/

平成29年(2017)3月のスギ花粉飛散時期には、スギ花粉症の方が推計48.8%にもなることが分かりました。これは、「東京都民のほぼ2人に1人」がスギ花粉による影響で困っているということですよね。
この急激な増加と、この調査から数年が経っていることを考えれば、もう半数の50%は超えているのではないでしょうか。

東京都に花粉症の方が多いのは、山間部から都心部に飛んでくる花粉の数も増えているのでしょうか?…

※2019年の花粉飛散予測と過去の花粉飛散数の経年変化についてまとめている資料を見つけましたが、都心部も山間部も含めて平均を算出したデータしかありませんでした。
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/01/23/21.html
(今回は、都心部の花粉数の変化を見たいので、また今度参考にさせていただきます。)

都心部の花粉は増えてるの?

山間部の花粉の飛散数は増えていても当然かと思われますが、都心部にはどのような変化があるのでしょうか。

今回、環境省花粉観測システム(愛称:はなこさん)のデータから確認してみようと思いました。
http://kafun.taiki.go.jp/
http://kafun.taiki.go.jp/Library.html

本当であれば、新宿区役所第二分庁舎の過去のデータを比較したかったのですが、過去から比較できるほどのデータがなかった為、代わりに、さいたま市役所川崎生命科学・環境研究センター(~H24川崎市衛生研究所)、神奈川県庁分庁舎の3地点のデータを比較することに致しました。
【地図↖参照】

関東では毎年2月~5月の花粉が測定されていて、花粉濃度の平均値の過去のデータが蓄積・公開されています。
今回は、その上記3地点で観測した期間平均値[個/㎥]を引用させてもらうことにしました。

2006年(平成18年)からのデータをまとめたものがこちら↴↴↴
※何度も見直しを重ねましたが、ご指摘あれば遠慮なく!↴↴↴

全国的には増えているのは、多くの特集番組やメディアでも言われているとおりかと存じます。しかし、山間部から都心部に飛んでくる花粉数については、さほど変わりないのではないでしょうか?
むしろ、減ってきているようにさえ見えます。(2006年よりも、さらに遡って比較しなければ確信はえられませんが…)

つまり、全国的な総量で考えれはスギの花粉は増えているし、特にスギの木の多い山間部に多い。ですが、都市部に絞って比較してみると、飛散する花粉数は増えてきているとは言えない、のでは?

都市部の花粉は増えていないのに、全国的あるいは山間部の花粉数も含めたデータを使って「スギの花粉は増えて来てる!!」という説明は、現実を掴めていないのか、合理的に都合のよい解釈を当て込んでいるに過ぎないのでしょうか。




花粉症が「都会人がなるもの」と言われるようになってから、都心のアスファルトコンクリートを理由にあげる方もいらっしゃいますが、むしろ都心部では街路樹などの整地も含めたグリーンデザインも発展してきていますし、少しでもスペースがあれば緑の豊かな都会のセンスあふれる憩いの場にしてしまいます。
また最近では、屋上の緑地化だけでなく、壁の一部にまでもグリーンを感じられるようにしたり水を流すなど、随所に工夫が感じられるようになりました。

最近の研究では、都心部特有の路面舗装による〝花粉の再飛散〟よりも、もっと大きな原因があると指摘されるようになってきました。通年性のアレルギー性鼻炎の方も増える中、その根本的な原因にどう向き合うかが今後の課題になると思われます。

花粉アレルギーの根本的なもの

多くの認識では、たくさんの花粉に接触することでカラダが花粉に対する抗体を産生して、花粉に対する免疫抗体が反応して痒みや鼻水といった不快症状がでるようになるとされています。花粉になるべく接しないこと(原因の除去)は重要であることに変わりはないのですが、同時に矛盾する疑問点にぶち当たります。

なぜ、花粉が多く飛散する山間部よりも、都心で急に発症したり、症状を強く引き起こすのでしょうか?

環境省は、スギ花粉飛散数がほぼ同程度で大気汚染の程度が異なる2地域を比較した結果、大気汚染の深刻な地域のほうが花粉症の有病率が高かったのですが、地域の生活習慣の違いや、両親からの遺伝など様々な異なる因子との兼ね合いから結論とは言えないとしています。(平成15年)
環境省の調査は、大気汚染以外にも花粉症の悪化につながる原因は他にもある、と主張したいだけの調査を並べつらねただけですし、現に平成15年からこのスタンスに変わりないことに不誠実さを感じます。

当然、それ以降も様々な研究が成されてきました。

その中でも特に、王 青躍 教授の研究が注目されています。
http://park.saitama-u.ac.jp/~wang_oseiyo/index-j.php

花粉が大気汚染物質と結合して破裂し、さらに小さな花粉となり、アレルゲン飛散量が増える。より体内に取り込まれやすくなることを発見。

また、花粉が大気汚染物質と結合することで、体内の抗体と結合性しやすくなり、アレルギー反応の重症化につながると確認。

これまで花粉症に悩まされてきた方々が「都会は空気が悪いから症状が酷くなりやすいんだろうな~」と、なんとなく暗に思ってきたことを、王教授が着々と科学的に解明を進めているんです。

本来、スギ花粉は固い細胞壁で囲われていて非常に強いはずなのですが、大気汚染などで強固な細胞壁に傷が付き、その傷口から水分が入り込むことで膨張し、破裂しれしまう考えられています。

ただ、ここで誤解してはならないことが、『大気汚染は中国からもたらすのも』というイメージ。

たしかに、季節的に辺西風は吹く頃合いになると大陸から黄砂が飛来します。その黄砂と一緒にPM2.5ももたらされるのも事実ですが、ほんの限られた時期だけ。実は、身近な大気汚染は通年を通して日常生活に潜んでいますし、大陸由来のその比では収まらない程なのです。


屋内のほうが空気は汚染されている

屋外と屋内の大気の体積、風や気流など比較しても。気密性の高い建物が主流になっていることも含めて考えると、汚染された空気を屋内で循環させているといっても過言ではないほど、最近流行の自動換気システムの程度はそんな程度です。
誰も、ご自分の自宅の中の空気が汚れていると言われて喜ぶ人などいないでしょうけれども、部屋のお掃除用スプレーを撒けば空気はきれいになると思っている方こそお考え直しを。

消臭スプレーやヘアスプレーなど、スプレー缶からエアロゾルを噴射させるものはナノ粒子と呼ばれることもあり、これらもPM2.5に当ります。PM2.5は、今では天気予報でもよく聞くようになり、すでに耳馴染みのあるキーワードとなってきました。かつて、煙草や野焼きなど、燃焼させることで発生するといわれてきた微小粒子状物質ですが、今ではその利便性やデザイン性から身近なスプレー噴射式の日用生活品が多くなってきたことから、より身近なものとなっています。

NOx(ちっ素酸化物)やSOx(イオウ酸化物)など。粒子状でなくても、生活空間を汚染しているガス状物質があります。日本ではだいぶ遅れをとっているのですが、室内のVOC(揮発性有機化合物)と言われ、大気汚染バロメーターとして重要な指標となっています。

文字度どりのイメージで、揮発するガス状物質です。
【図↖VOCイメージ;ダイソンより】

ルームフレグランスや柔軟剤などに使用される香料も揮発性有機化合物ですし、接着剤や塗料・インクが乾くときに揮発するものも…。
経済産業省は「有機溶剤」と説明していますね。
http://www.meti.go.jp/policy/voc/top/index.html
環境省は「PMや光化学オキシダントの原因」としています。
https://www.env.go.jp/air/osen/voc/voc.html
※ただし、経済産業省も環境省も(完全に縦割り行政で)屋外のVOCにしか触れてはいません。つまり、屋内の環境は、管轄外となります。

厚生労働省は「シックハウス対策」の基準にも規定していますが、日本の規制は少なく世界に大きく遅れをとっています。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei/sick_house.html

いまでこそ、やっとPM2.5を意識する方々が増えてきていますが、今後、室内のVOCについても他の先進国を同様に厳しい目で考える姿勢となっていくと考えられます。

目に見えない大気汚染の問題であっても、自身のアレルギー症状が悪化してしまう可能性があるということを考えて対処できたらいいですね。

スギの花粉の量なんて個人の力ではどうしようもない程、飛散シーズン中に症状に苦しむ方がいらっしゃいます。ですが、スギ花粉の量をコントロールする事は難しくても、アレルギー症状を悪化させない方法は取れるかと思いますし、また花粉症になっていないご家族も守ることができる可能性もあります。

花粉は分解させてはいけない

王教授の研究の成果①↴を思いだしてみましょう。
『花粉が大気汚染物質と結合して破裂し、さらに小さな花粉となり、アレルゲン飛散量が増える。より体内に取り込まれやすくなることを発見。』

…花粉が破裂すると、数多くの細かいアレルゲンが飛び散る、ということは、「花粉を分解」や「花粉を破壊」といったキャッチコピーで売られている商品には注意が必要ということになりますよね。

その商品は、破壊された花粉から飛び散るアレルゲンを想定してのことなのでしょうか?よくよく吟味する必要がありそうです。花粉を破壊したり、分解したりすることなく粒子としてキャッチする集塵能力を優先させるシンプルな方法が望ましいと考えられます。

PM2.5やVOCの低い空間づくりを

王教授の成果②↴について。
『花粉が大気汚染物質と結合することで、体内の抗体と結合性しやすくなり、アレルギー反応の重症化につながると確認。』

いまやPM2.5対応の空気清浄機などスタンダードとなっていますが、VOCにも対応できる商品を使用している方は少ないのではないでしょうか?
焦って購入する必要はないとは思いますが、まずは身の回りの製品のPM2.5やVOCについて考え直すことからはじめてみてはいかがでしょうか。

料理の香りなどは自然とすぐに消失するものなので、分解は早いです。しかし、合成された揮発性有機化合物(VOC)は長時間が経ってもなかなか分解されないから高値になりやすいのです。

また、花粉症に限らずとも、PM2.5やVOCは将来的な健康に悪影響がでてくる可能性があるものです。大気汚染がアトピー性皮膚炎にも影響するという研究もありますし、一般的に考えてみても、きれいな空気を吸うことが健康にいいなんて当然のことだと思います。

揮発性有機化合物(VOC)の概念のある空気清浄機メーカー

国内の空気清浄機は、イオンオゾンなどの作用で「ウイルスや細菌」を除菌するといった機能が重要かのように企業間競争が行われていますが、たいぶ世界の空気清浄機市場とはガラパゴス化していっています。本来の空気清浄機の目的は大気汚物質を取り除くことであって、ウイルスや細菌と戦うのは体内の免疫システムです。

人間本来の免疫力を獲得し、最大限に活かしていくには綺麗な空気が必要です。

空気清浄機は無菌空間を作り出すものではないのですが、国内メーカーの動向を見ていると、他社との比較・差別化に「ウイルスや細菌をいかに無害化するか」に争点が傾いていっていると感じます。
そして、そのような無菌空間を目指す空気清浄機は、必ずしも必要なものではありませんよね

花粉症などのアレルギー症状に悩む方々は標準治療に加えて、自身の生活空間の大気について考え直してみてはいかがでしょうか。

平成の時代に突入して数年が経っても、花粉症は心因性だの、小児は親の症状を見て真似ているだけ(小児にスギ花粉症などないとする説)…とまで健康番組で持論を展開していた専門家までいらっしゃいました。
原因がよくわからないものを精神的な問題や集団ヒステリーとしてしまう流れは、いつの時代も変わりないのだな、と皮肉にも思えてなりません。

そう考えると、平成の時代の研究が進み、様々なことが分かってきたとも言えるのではないでしょうか。

花粉症シーズン特にスギ花粉の季節になると、各社どこも販売戦略を練りに練り、商機とばかりに商品の宣伝を始めます。もはや、スギ花粉症はビジネスとして大きな影響力をもたらすものとなっているのは事実です。
シーズン前から店頭の商品棚の配置競走が起きており、先取り予防の特設コーナーから、スギ花粉の本格シーズンに向けての商品販売のスピード感もめまぐるしいものです。

今回、こちらにまとめた内容が、どなたかの花粉症対策を改めて考え直す機会になれば幸いです。

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