Appleは、2019年1月、iPhone・iPad・Apple watchといった製品で毒ガスを検出する内臓センサーに関する特許を取得したとあり、Apple関連ニュースに敏感な方たちに取り上げられました。
特許を取得したセンサーは、「オゾン(O3)・二酸化窒素(NO2)・一酸化窒素(NO)・一酸化炭素(CO)・二酸化硫黄(SO2)・メタン(CH4)・揮発性有機化合物(VOC)のうち少なくとも1つを含むガス」の検出が可能だそうです。
ここ最近、Appleはヘルスケア分野に非常に力をいれていますが、なぜ?毒ガス?…とヘルスケアとの関連性について気になった方も多いのではないでしょうか?
特に、揮発性有機化合物(VOC)は、まだ日本ではあまり浸透していない大気汚染指標の1つです。日本では未だに、PM2.5すら中国大陸が原因だと偏ったイメージが根強くあるので、VOCにまで行き届きませんし、日本のVOC規制の対象となる成分も少なく、合計の総VOC(TVOC)は目安のみであり厳しく規制されているのもではありません。
オゾン(O3)についても、「環境によさそう」「健康によさそう」…というイメージを持たれている方もいらっしゃいます。
ここ数年、やっとPM2.5などについて意識する方々も増えてきました。今回は〝身の回りのVOC〟の話から、いままで日本はいかに大気汚染に無頓着だったか、日本の空気清浄機の機能も世界とかけ離れ方向性を見失いつつあることを改めて考えていきたいと思います。
そもそも揮発性有機化合物(VOC)って?
VOCは揮発性有機化合物(volatile organic compounds )の略称で、揮発性があるため、大気中で気体状となる有機化合物です。塗料や接着剤、洗剤、シンナーなどに含まれるトルエン、キシレン、酢酸エチルなど多種多様な化学物質です。
経済産業省は「有機溶剤」と説明し、大気中の光化学反応により、光化学スモッグを引き起こす原因物質の 1つとしています。
http://www.meti.go.jp/policy/voc/top/index.html
環境省は「PMや光化学オキシダントの原因」としています。
浮遊粒子状物質(PM10以下のSPM)及び光化学オキシダントの原因には様々なものがありますが、VOCもその1つ、とされています。
https://www.env.go.jp/air/osen/voc/voc.html
※ただし、経済産業省も環境省も(完全に縦割り行政)屋外のVOCにしか触れてはいません。つまり、屋内の環境は管轄外となります。
しかし、多くの時間を過ごす屋内こそ大切ですよね。
(屋内の管轄は、厚生労働省となります。)
厚生労働省は「シックハウス対策」の基準にも規定されてていますが、日本の規制は緩く世界に大きく遅れをとっています。さらに、この基準では、建築資材の基準にされていることが多く、日常生活でのVOC発生源の実態が伴っていません。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei/sick_house.html
目に見えない室内の大気汚染の問題であっても、他の先進国と同様に厳しい目で考えていく必要がありますし、もしかしたら、そう遠くない未来のことなのかな…と期待できるAppleの特許取得ニュースでした。
身の回りのVOCの発生源!
さいたま市大気汚染常時監視測定局で開催された「あおぞら測定体験教室」のデータを参考に考えてみましょう。
http://www.pref.saitama.lg.jp/page/aozoratai.html
こちらは小学生を対象とした勉強会で、大気環境やPM2.5について学び、NOx(窒素酸化物)やVOC(揮発性有機化合物)の濃度を測定してみよう、という教室でした。NOxは屋外で、VOCは屋内での調査です。
【VOC測定分析の結果】
木工用ボンド 0.5 ppm
油性マジック≪細≫ 90 ppm
油性マジック≪太≫ 224 ppm
柔軟剤① 653 ppm
柔軟剤② 642 ppm
固形のり 0.0 ppm
接着剤≪プラモデル用≫ 2477 ppm
フェイシャルシート 1900 ppm
シンナー 384 ppm
香水 206 ppm
室内用消臭芳香スプレー 67.7 ppm
※身近なモノとの比較のために、油性マジックを『赤』にしてみました。
油性マジックのインクは有機溶剤の中に溶けた染料や樹脂ですよね。有機溶剤が揮発して染料や樹脂が固定・定着するため、最近では安全な有機溶剤が使われているものもあるようですが、価格帯が上がり速乾性も落ちる傾向にあります。
十分な換気をしながら油性マジックを使用するように注意し、心掛けても、鼻に残るように感じる人や頭痛を引き起こす方もいらっしゃいますし、特に小さいお子さんがいる場所での使用は注意しますよね。
しかし、何時間も使用を続けるものでもないので、しっかり換気して使用さえすれば大丈夫でしょう。
その使用時間も考えて、油性マジックを基準に考えてみてください。
この測定の中で1番に高VOCを記録したプラモデル用の接着剤については、そもそも趣味としてる方は『有機ガス用の防毒マスク』を着用して作業に当たっているかと思います。揮発した有機溶剤を吸い込むと健康に悪影響があると知ってのことですよね。
数時間に渡って作業を続けることもありますし、健康を損なうことなく趣味を楽しむためには大切なアイテムです。
驚くのは、香水や柔軟剤など。
たとえ、〝好きな香り〟を選んで使用していたとしても、その香料や溶媒は有機溶剤だと言えます。ましてや、その成分情報も把握していないので、安全なものなのかどうかもわかりませんし、有機溶剤は脂質移行性が高い(油に溶け込みやすい)ので体内に蓄積されていきます。
しかも、24時間365日、その環境下で過ごしている可能性もある問題です。必要な時だけ使用する他の製品とは、本質的に異なります。
ご自分は心地よい香りだと感じても、その逆に、油性マジックのように換気の必要なニオイだとしても、元を辿れば有機溶剤といえます。
また、シンナーのニオイもお好きな方もいらっしゃる程ですので、好き嫌いの問題とは分けて考える必要がありますよね。
もちろん、何の匂いも感じない揮発性有機化合物(VOC)も多々あります。
他人の空気を汚さない
欧米では、既に『他人も吸う空気を汚してはいけない』という概念があり、不特定多数の集まる場所での喫煙や香料の使用も制限する動きが広がっています。
まだ、日本では煙草もPM2.5の発生源だという認識もあまりありません。喫煙後の呼気の総揮発性有機化合物(TVOC)の濃度が通常レベルまで減るのに45分かかる≪産業医科大学など≫と分かり、エレベーターの乗り込みに制限を設けた自治体が話題となりました。
この動きが日本全国に広がるまでに、まだまだ時間はかかるかもしれませんが、大手米国企業Appleの製品は大きな後押しになるかもしれません。
▼大気汚染は、花粉症などを含む様々なアレルギーの引き金になると言われています。↴↴↴
日本の空気清浄機についても少し触れさせていただいています。↴↴↴
どんなに口から入る食べ物に気を使っていたとしても、実は、食べ物・飲み物よりも何倍もの体積の「空気」を取り込んでいます。
そして、人が摂取する化学物質の8割以上が、吸引(呼吸)に由来するものと言われています。
▼巷では「香害」と呼ばれ、問題視されています。↴↴↴
なぜ、経口摂取(食物など)よりも、経肺(呼吸によって取り込まれること)の方が問題かについても、書かせて頂いてます。↴↴↴