医療, 心身ともに健康に

香害病院~ニオイは大事な情報源~

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香害病院という言葉聞いたことありますか?ここ数年、香害、スメハラ、柔軟剤マーキング・・・生活の中に溢れる香りに嫌悪感を抱く言葉をよく耳にします。本来香りとは無縁なはずの病院ですが、近ごろ無意識にも芳香性製品の安易な使用が多くなり、体調不良で訪れる患者をさらに苦しめているようです。

急な応援でとある医療機関に赴いたところ、院内に充満する香りに驚きました。患者が家庭より持ち込む香りも一部あるでしょうが、忙しい業務の中で職員がフローラルの香りをまとって院内を小走りに仕事をしています。このとき、香害病院という言葉を思い出し、患者の健康に不都合な結果しかもたらさないと痛感したしました。

医療従事者であれば職務理由上「香水は禁止」は当然のことと認識しているはずですが、香り付き・防臭機能付き商品が氾濫するなかで抵抗感が薄らぎ、次第に院内に持ち込むようになってしまったと考えらます。ヨーロッパなどでは、アロマオイルは単なる癒し雑貨ではなく、医薬品として流通し一部の国では医師、薬剤師のみ精油をブレンド(調剤)・販売(投薬)が認められています。いわば、医療従事者は、揮発性有機物質(香り)によるの影響を甘く考えてはいけない立場にあり、不特定多数の方々に揮発性有機物質を吸引させてはなりません。

患者でさえ、香りを付けない、煙草を吸わないように配慮し病院に受診するひとが多くいらっしゃいます。ましてや、病院の香害でさらに体調が悪化するようなことは、避けなければなりません。精油ではなく人工香料だから許されるといことはなく、むしろ人工香料(合成香料)の有害性の認識は医療従事者として然るべきことなのです。また、殺菌・除菌を謳う商品も多く市販されていますが、除菌効果が認められる商品であれば人体にも影響を及ぼすことを念頭におかなければなりません。

病院こそバリアフリーの徹底を

そもそも病院には、様々な方々がいらっしゃいます。患者やその家族、お見舞い、何らかの障害を抱えているいる方、その付添人など…見た目だけでどのようなディスアドバンテージ・ハンディーキャップを抱える方なのか周囲が理解できることは極わずか。

日本でのバリアフリーの意味は非常に狭く、足の不自由な人のための構造的なバリアを失くすことだけととらえがちです。本来は、もっと広義の社会的な障壁であり、言語的な問題や視聴覚・発話機能に障害のある方、妊娠・育児、認知機能低下などなど・・・必ずしも病気や身体的障害による社会的障壁だけをさす言葉ではありません。

時に空気も同様に、社会的障壁となります。今でこそ日本でも、環境たばこ煙による受動喫煙に世間の目が厳しく集まるようになってきましたが、まだまだ三次喫煙まで配慮した公共施設は少ないのが状況です。その空間の空気を皆で共有しているという概念がなく、煙や揮発性有機物質を他人に吸引させることに抵抗が少ない後進的文化圏です。

ましてや、市販の消臭剤は内容成分が公表されておらず、また消臭成分や香料に持続性をもたせるための化学物質についても、健康に悪影響がないか検討すらされておりません。現に、香害として健康被害を訴える方々も多くいる中で、日常生活もまともに送れない程の状況にまで追い込まれている方々もいらっしゃいます。

言わずもがな、視聴覚に障害のある方にとっては、嗅覚による情報は大きい比率を占めます。一部の発達障害の方にとっては、光や音と同様に嗅覚からの情報でパニックを起こすこともあります。妊婦も香りなど感覚刺激に敏感になりますし、呼吸器の弱い方は、わずかな煙や揮発性有機物質でも喘息発作を起こしたりしますし、目や鼻粘膜刺激による不快感を訴える方もいます。まだまだ挙げればきりがありませんが、 〝病院こそ弱者の立場に立った環境を整えるべき場所 〟と考えるのは、当然のことと感じます。



香料・消臭成分は治療の邪魔

一部病院では、喫煙者のMR(医薬情報担当者)やMS(医薬品卸)、清掃業者など業者の出入りを禁じているところもあります。二次喫煙・三次喫煙の防止を目的にするもので、敷地内での禁煙のみならず、そもそも日常で煙草を嗜むMRを担当にしないという徹底した病院もあるほどです。そこには、やはり喫煙者は自らの臭いを判断するのが難しく、そもそも病気の原因にもなる煙草を吸いつつ「患者の健康の為」と称して自社医薬品の営業に来るMRは煙たがれれます。

理由はもちろん患者の健康のため。

まず、わずかな煙や揮発性有機物質による臭い刺激で、化学療法に失敗することもあります。抗がん剤治療のことです。がん治療中だけのことではなく、一度化学療法を受けると様々な化学物質に敏感になることも珍しくありません。たとえば、一般病棟に移った際、あるいはご家庭に帰った際、ご家族が感染防止のため良かれと思って撒いたスプレー式消臭剤、それが原因で頭痛、めまい、嘔吐し病院に再搬送されるということもあります。

抗がん剤治療を受けたことのある人だけに起こる訳ではありません。 健康な成人でも香害と感じる程、めまい、悪心・嘔吐、鼻炎・鼻閉、頭痛・片頭痛の悪化、咳・息苦しさ、それらに耐えることで慢性的な疲労感・倦怠感、終いには中枢にまで影響がではじめます。

安易な、香り付き・消臭機能付き柔軟剤、芳香剤、整髪スプレー、除菌・消臭剤、香り付き合成洗剤の使用は、揮発性有機物質の発生を介して他者の健康までも脅かします。

香料・消臭成分は診察にも悪影響

なぜ対面での診察が大事だと言われているのでしょうか。意外と体臭や口臭なども、総合的な判断に必要な情報となります。今は、嗅診だけで診断を確定はしませんが、大事な気づきになります。

先日、糖尿病既往の長い方が甘酸っぱい臭い(ケトン臭)が気になりました。後に担当医に確認しましたが、血液検査は3~4か月毎なので今回は無し、とのこと。ご家族から、最近口臭が気になるとの相談があったようですが、担当医は気に留めなかった模様でした。(詳しくは控えます)

その医師からは消臭機能付き柔軟剤の臭い・・・その影響か否か、気づきがあったとして結果に変わりあったか、今となっては分かりません。白衣は病院提携のクリーニングに出したものですが、その医師だけ消臭・防臭系柔軟剤の成分の特有の臭いを感じましたし、患者の口臭や体臭に気付かなかったということは事実です。

また、とある親子の話、子供の下痢症状で病院に。どうやら、前日に腐った離乳食と気づかず食べさせてしまったようで、父親が発酵臭に気付いた、とのことでした。(詳しくは控えます)

嗅覚は身を守るために発達したものでもあります。あえてガスに特有な刺激臭が添加されているように、危険なものを逸早く察知できるように嗅覚は大事な機能を担っているといえます。また、食品の腐敗でけでなく、子供の尿の臭い、口臭や体臭で異変を察知することで、 家族の健康の変化にもニオイで気づくことができます。

今後、遠隔診療などが増え、対面による診察が当然ではなくなってくるだろうと考えられます。その時、見た目による様子の変化たけでなく、ご家族の体調の変化をニオイで伝えることは重要な情報源となっていきます。



介護施設や保育園の芳香性製品

ここまでお読み頂ければ、病棟などに芳香剤を置いたり、安易に消臭剤を撒いたりすることは避けるべきこととお分かり頂けるのではないかと思います。

ですが、介護施設や保育園などで各部屋に芳香剤を置いているところもある程です。排便に気付いてか気付かずか、定期的なオムツ交換まで長時間そのままになってしまったり、結果的に不衛生な状態を助長しているとさえ感じます。人手不足で致し方なく、という理由は正当性に値しないでしょう。介護施設や保育園、幼稚園などは、保護者に代わって家族の健康を預かる場でもあります。

みずから体調の変化を正確に訴えられない乳幼児や高齢者を、強い香りで覆い隠してしまおうとする姿勢は如何なものかと感じます。

乳幼児は味覚とともに嗅覚、触覚、運動感覚などの 発達に重要な時期でもあります。 感覚器官の発達は、乳幼児期に経験した感覚に基づき脳を刺激し、環境的要因も大きいと言われています。

また、大人よりもはるかに体の小さい子供は、 薬物を代謝・解毒する機能もまだ未熟です。 香り付き・消臭機能付き柔軟剤や芳香剤、殺菌・消臭スプレーの成分が不確かな日用品は安易に使用しないよう、必要最低限にするべきではないでしょうか。

不安を煽って商品を買わせるサイトは参考にしない

日用品などは全内容成分の表示は義務づけられていません。つまり、不都合な部分は表示しなくても良いのです。

『天然〇〇配合』『純〇〇配合』と記載があっても、たった1滴しか配合されていないかもしれません。『子供用』『赤ちゃんにも使える』という基準は、自社基準でしょう。一部乳幼児用のおもちゃは顔料など厳しい規制はありますが、日用品に〝あたかも医薬品かのような安全性を謳った商品〟は参考になりません。

医薬品でもないのに、小児に安全性が認められるかどうか分かりませんし、小児容量まで検討してるはずがありません。日用品などは軽く扱われがちですが、規制されてないことを考えると真新しい商品にとびつかないよう慎重に考えるべきだと思います。

口コミは、企業にとって都合の良い、ポジティブな情報しか載っていません。

時折、消費者庁国民生活センターのホームページを見るくらい、賢い消費者になれれば良いですね。

どんな商品がどんな理由でリコールになったのか知ると、今後の商品選びにも非常に参考になります。商品で皮膚トラブルがあった情報から、製品の素材にも気を使うようになります。日本の揮発性有機物質(VOC)規制は緩いことを考えると、北米や欧州の製品を購入するという方法もあります。(日本での販売用ではなく、現地用の輸入品。)

結局、昔ながらの商品が一番手頃で安心できると落ち着きます。もちろん現代にも、健康のことを一番に考えた商品もあるでしょうし、自分が子供の頃どんな商品を使っていたのか、今一度立ち止まって考え直してみる良い機会になればと思います。

皮膚科医やスタッフの意識やレベル

一昔前には、赤ちゃんの衣類は柔軟剤を使わない、抱きかかえる家族も同様…という事は常識でした。

メディアや企業は、〝それは昔の古い人間の言う事〟〝今の柔軟剤は、昔と違う〟〝赤ちゃんにも使えるって書いてある〟と思い込ませようとしていますが、柔軟剤の主成分(陽イオン合成界面活性剤)は入っています。両性イオン合成界面活性剤の商品もありますが、ご家族と使い分けていたのでは無意味ですし、そこまでして絶対に柔軟剤を使うことにこだわる必要性はあるのでしょうか。

アトピーなど、皮膚トラブルには皮膚科にかかろうと大抵の場合は思いつきます。しかし、その皮膚科医やスタッフが柔軟剤の強い香りを放っていたら、考え直して他に受診した方が良いかもしれません。

アトピー持ちは総じて他のアレルギー疾患や喘息も併せて患ってる可能性が高く、その点をご存じない医療者、という事になります。

香料による刺激は、喘息など誘引します。香料その他の揮発性有機物質は、花粉などによるアレルギー症状を増強します。何より、陽イオン合成界面活性剤の細胞透過性(刺激性)を知らないというのは甚だ勉不足が過ぎると感じます。

もしかしたら、医院の経営的な側面から、皮膚トラブルの原因除去という治療の第一選択を見逃す方針なのかもしれません…。

患者の健康の為を思い親身に指導してくださる勉強熱心な方は、柔軟剤のみならず、洗濯洗剤の洗浄成分や酵素まで把握されています。時に、ボディーソープの相談まで乗ってもらえるくらいにお詳しい。

経営的な面から考えれば、患者として何度も受診してもらう方が好都合です。そこを敢えて、原因の除去から取り組もうという姿勢は、なかなかできない正義感のある医師だと信頼に値するのではないでしょうか。

柔軟剤はいらない&使わない方法~本当は使いたくない人が多い~







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