【受動喫煙】どう減らす?|NHKあさイチ|2018年3月19日(月)
本人がたばこを吸わなくても、他人のたばこに煙にさらされる「受動喫煙」。本当に健康に及ぼす影響をご存じですか?・・・
前週から事前情報が出回り、医療関係者や患者団体など期待を抱きつつも、一方、また業界団体の圧に屈する結果になるのではないかという不安も入り混じりつつ本放送を視聴した方も多いことと思われます。
たばこ業界からの圧力とスポンサーとしての影響力から、これまで多くのメディア(テレビ、新聞なども含む)は踏み込むことができなかった情報でもあります。NHKは公共放送でありながら、これまで利権を害する具体的な表現をさせてきた印象があります。
今回、時間という制限がありつつも、国家の統制からも自立し、公共の福祉のための放送として責務を果たしたと評価する声も多く聞こえます。
国営放送であったのなら、JT筆頭株主の財務省やたばこ議員連盟からの干渉により、今放送はおろか国民の健康が犠牲になっているなど一切知らされることは無かったかもしれません。また今回、番組内でたばこ議員連盟に触れ、視聴者も驚く情報になったことはキャスターの反応からも明らかで、受動喫煙対策に反対する日本の政治の闇に気付いた視聴者は多くいたと思われます。
出演・解説した医師
◆産業医科大学教授… 大和浩 医師
◆群馬バース大学客員教授 小児科医… 井埜利博 医師
◆日本禁煙学会理事… 稲本望 医師
◆大阪大学大学院… 祖父江友孝 教授
環境たばこ煙から子供や非喫煙者の健康を守り、また、喫煙者には禁煙の支援にご尽力されている方々です。
科学的な知見と世界的な常識から、業界からの圧力に屈せず、国民の健康を守るために活動されています。本来であれば国民の健康を守るのは国の大切な役割ではありますが、そもそも政府がたばこ会社の株主とあっては利権構造は単純なものではありません。
複雑な政治的背景もある問題に踏み込む、画期的な内容でした。
厚生省にる報告書「喫煙と健康」
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000172687.pdf
推計で年間1万5千人もの人が受動喫煙により亡くなっていること、そして、因果関係がまだ不明な部分も多くあることから分かっているだけでも1万5千人と推計され、今後の研究次第ではそれ以上の人が犠牲になっていると解明される可能性がでてくるとしていました。
たばこ煙には7000種類もの化学物資が含まれ、その煙の受動喫煙によりアレルギーを発症する人も相次ぐなど、健康への影響が懸念されてきました。
PM2.5サイズの粒子状物質であれば、マスクや空気清浄機で対応できますが、たばこ煙にはさらに小さいガス状物質(揮発性有機物質など)も含まれます。受動喫煙を繰り返すことで、洗剤・芳香剤などの揮発性有機物質にも症状を訴えるようになってしまします。
分煙に効果なし<煙がなくても受動喫煙>
暮らしの科学研究所:http://www.lsrl.biz/index.html<<実験協力>>
喫煙後の呼気から、4分間にわたり発がん性物質が基準を超える値で検出され、一酸化炭素は30分にわたり検出さてれる、とのこと。喫煙所の出入りの際に化学物質が流出し、衣服や髪などについた化学物質は自宅にまで持ち込まれ、その場にいない非喫煙者も吸い込んでしまう。(三次喫煙)
喫煙前の呼気に戻るまで45分もかかるというデータもあり、その場での喫煙を控えても、喫煙直後に子供を抱くなどすると衣服や呼気から化学物質に曝されてしまう点に注意しなければなりません。
加熱式たばこにも同様なことが起こり得ると言われ、煙が見えないからといって安心できるものではありません。むしろ、紙巻きたばこ(燃焼式)には想定できない健康被害の可能性もあり、燃焼によって焼失する化学物質についての研究と加熱式たばこの安全性についてはまだ結論はでていないのが現状です。
このような理由も含め、まだアメリカでは加熱式たばこの販売は認められてはおりません。日本においては、加熱式たばこは健康に悪影響があると因果関係は確認できないとしています。・・・通常の考え方であれば、健康に悪影響がないという結論がなければ、安全とはいえません。しかし、この国では今後20~30年かけ因果関係を証明し悪影響があることが認められなければ規制対象にはならない利権構造のようです。
子どもの受動喫煙
喘息や乳幼児突然死症候群(SIDS)は因果関係が「確実」、中耳炎やむし歯は「ほぼ確実」とされています。引き続き、個々の疫学研究で日本人でも統計学的に有意な関連が示されれば、「ほぼ確実」から「確実」と明らかになっていくでしょう。
埼玉県熊谷市では、小学4年生を対象に尿検査を行い受動喫煙の実態を調査しています。なかでも特に数値の高い子どもには、保護者に対して注意を促す文書を送り、保護者の受動喫煙に対する意識が変わり喫煙率も少しずつ下がってきているといいます。
東京都子どもを受動喫煙から守る条例<<平成30年4月1日から施行>>
http://www.tokyoto-koho.metro.tokyo.jp/file/koho/id/4134/f/10006/2017_85.pdf
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kensui/kitsuen/kodomojourei.html
子どもは、自らの意思で受動喫煙を避けることが難しく、子どもが安心して暮らせるよう制定、国に先行した取り組みとして期待されています。家庭内の私的空間に踏み込む内容に慎重になるべき、との意見も出たようであるが、子どもの生命にかかわる問題であることが疫学的に証明された日本でも当然の流れとなってきています。受動喫煙は虐待にあたるとする国もあり、この条例の施行の日から起算して一年後に、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる、としています。
その他・・・
マンションのベランダなどの共有部分での喫煙による受動喫煙による問題も取り上げられました。
マンションや住宅によっては、室内の換気扇の下でたばこを吸っても、換気扇からベランダへと空気が送り出される構造になっていることもあります。共用部分での喫煙に関する管理規約だけでは、受動喫煙対策として保障されるものではないのが現状です。最近では、禁煙マンションなども人気となっているようで、国が規制してくれないなら自分で動くしか方法はないようです。
今回NHKがここまで踏み込んだ番組を放送したことに、正直驚きました。
おそらくテレビ業界としても、今回この番組制作に携わった方の中にも喫煙される方はいらっしゃるかと思われます。それでも、国や企業の圧に屈せず特別編成を組み、公共放送としての特別な存在感を感じました。NHKの今後の流れに期待したいです。
いまだ日本では、自身の喫煙コントロールができない方を深刻な薬物依存症であるとの認識が低いのが現状です。喫煙の自由は、他者の公共の福祉に反しない限り認められる権利であり、今後は他の先進諸国のように自己管理のできない人間とされる時代が日本にも来るであろうと感じます。